2011年の通常国会で成立した「高齢者の住居の安定確保に関する法律」(通称:高齢者住まい法/高齢者住居法)が同年10月11日から施行された。その法律の第三章で「サービス付き高齢者向け住宅」について規定している。それによると、基本は60歳以上の単身もしくは夫婦だけの高齢者世帯が安心して住まうための介護や生活支援サービス機能などが付帯したバリアフリー集合住宅ということになる。
この背景には、日本の急速な高齢化に伴い、単身高齢者や高齢夫婦世帯急激な増加が上げられるのはいうまでもない。高齢者向け住宅が普及していない現在、要介護度が低いお年寄りが、特別養護老人ホームにやむなく入所する例が少なくない。このような現状を打開するため、国の計画では2020年までに60万戸の「サービス付き高齢者向け住宅」を供給するという。
そこで、一般消費者にあまり認知されてはいないが、大手ハウスメーカーもこの「サービス付き高齢者向け住宅」建設に続々と参入した。結果、2011年から登録を開始した全国の前述住宅は2013年11月現在で4100棟を超え、総戸数13万2600戸あまりとなった。
ハウスメーカー大手の積水ハウスでも、これまでに6600戸(うち東京都では1621戸/シェア22%強)あまりを供給してきたが、今後はさらに建設を加速させるという。
首都圏における積水ハウスの「サービス付き高齢者向け住宅」の特徴は、2ブランド展開といえそうだ。ひとつは、アクティブシニアと呼ばれる自立健常者を対象にした住居で単身・夫婦世帯が対象の住居「グランドマスト」シリーズ。もうひとつは、介護は必要な単身者を対象にした「Cアミーユ」シリーズだ。前者は40㎡-60㎡クラスの1LDK-2LDK主体で、後者は25㎡クラスの1LDK。ともに専有部にバス・トイレ、洗面所、キッチンが備わった住居として成り立っている。
今回、積水ハウスがプレスに向けて同社の最新型サービス付き高齢者向け住宅「シノン青葉台」を公開した。これは、「グランドマスト」と「Cアミーユ」が2棟つながったような複合集合住宅施設。同時に近隣居住者向けのデイサービス事業も展開予定の施設だ。積水ハウスは設計施工に加えてコンサルティングを行い、運営主体はしのはらA&M株式会社が行なっている。
会見で印象的だったのは、積水ハウスの平林文明取締役専務執行役員が、「我々は高齢者が暮らす“施設”を提供するのではない。高齢者が安心して自由に住まうことが出来る“住居”を提案します」と述べたこと。
確かに、独立した専有居住スペースはプライバシーが守られている。なかでも自立健常者向けの住居は、通常の集合住宅と同じ「玄関“ドア”」が採用され介護施設然とした印象は皆無だ。要介護認定者の住まい部分は、さすがにドアというわけにはいかずスライド式の引き戸だが、積水ハウスでは規定による18㎡を大きく超えた25㎡を社内基準値に据え、ここ「シノン青葉台」では最低床面積27.28㎡としている。単身者のプライバシーは十分に守られる設計と見た。(編集担当:吉田恒)