「ストック型社会」への関心が世界的に高まっている。ストック型社会とは、価値のあるものを長く大切に扱う社会のことで、環境に優しい、持続可能な社会をさす。中古車、リサイクル家具、リーユース商品、ユーズドの衣類など、呼び方は様々だが、良いものを繰り返し使う循環型の消費スタイルが見直され、定着しつつある。
日本ではもともと、家庭レベルでも兄弟姉妹間での洋服の「お下がり」などが一般的に行われていたし、今や世界共通語ともいわれている「もったいない」も、日本人の精神をあらわす言葉であるとともに、ストック型社会を象徴するような言葉でもある。そういう意味では、日本人の生活は潜在的にストック型社会に基づいており、今さら取り立てて珍しいことでもないと言えるかもしれない。
ところが、例外もある。その例外とは、日本の住宅市場だ。諸外国に比べ、日本の住宅の寿命は短いといわれている。しかしそれは、建物の耐久性の問題ではない。木造家屋でも手入れの行き届いたものは百年単位で住まわれているものもあるし、現在は鉄骨作りの住宅も一般的だ。それにもかかわらず、日本では中古住宅に対する評価が著しく低く、築十数年も経過すると資産としての価値が失われてしまうように言われることが多い。とくに中古流通市場では、築20年の木造物件の建物評価はゼロ、さらに減価償却に関する省令でも、木造建物の法定耐用年数は22年と定められている。
メンテナンスさえすれば、まだ充分に使用できる住宅を短い年月で取り壊すのは、ストック型社会の実現とは相反するものだ。このような問題に対し、各住宅メーカーも新築物件の開発・販売だけでなく、未来に向けた取り組みを始めている。それが優良ストック住宅「スムストック」といわれるものだ。スムストックとは、戸建住宅にあって、通常の使用条件のもとで、適切な補修をした場合、長期の耐用性を有するもので、優良ストック住宅推進協議会の定義する条件に該当するものをさす。優良ストック住宅推進協議会(本部:東京都港区、会長:和田勇氏)は、積水ハウス<1928>、住友林業<1911>、ダイワハウス<1925>など、大手住宅メーカー10社からなる組織で、独自の査定を行うことにより、中古物件にも価値を見出している。
また、環境などへの配慮はもちろん、住宅メーカー側としても、スムストックのような取り組みとストック型社会の実現は、今後の住宅市場の一つの柱と考えているようだ。(編集担当:藤原伊織)