【携帯電話キャリア 2013年の振り返り】ソフトバンクのスプリント買収とアップルの新型iPhone発売、ドコモ参入騒ぎで暮れる

2014年01月05日 18:22

 電気通信事業者協会が毎月発表している「携帯電話・PHS契約数」の統計によると、2013年11月末現在の携帯電話契約数は1億3583万件で、2012年11月末に比べて0.4%の増加だった。すでに契約件数は日本の総人口を上回り、市場は「これ以上拡大しないパイの食いあい」になっている。もっとも、事業者別に見るとNTTドコモ<9437>が6190万件で前年同月比1.9%増、KDDI<9433>の「au」(沖縄セルラー電話<9436>を含む)が3939万件で7.7%増、ソフトバンク<9984>のソフトバンクモバイルが3453万件で11.2%増で、3社とも契約件数は増加をみせている。

 市場シェアはNTTドコモが45.57%、KDDIが29.00%、ソフトバンクが25.42%だが、月別に見るとNTTドコモが9月までずっと続いていた契約数純減に歯止めをかけて上昇に転じ、年間契約件数2ケタ増のソフトバンクがKDDIを猛追して、そのすぐ後ろに迫っているという状況。2013年で最も元気なキャリアはソフトバンクだった。

 そのソフトバンクの2013年最大の話題は、7月に216億ドルでアメリカ第3位の携帯キャリアのスプリント・ネクステルの買収・子会社化を完了したこと。1月にアメリカの司法省が連邦通信委員会(FCC)の買収審査に待ったをかけ、4月に衛星放送のディッシュ・ネットワーク社が、スプリントの買収競合だけでなくスプリントの子会社クリアワイアの買収という搦め手からもさや当てをするという緊迫感ある展開だったが、最後はクリアワイアともども収まるところに収まった。

 猛暑の夏に業界関係者だけでなく一般の携帯ユーザーの間でもしきりに駆けめぐっていた噂が、「秋に発売の新型iPhoneからNTTドコモが取り扱いを始めるらしい」というもの。その噂は本当だった。新型iPhone「5s」「5c」は9月14日に5s限定で予約が始まり、20日に世界ほぼ同時に発売された。3日間で世界で約900万台が売れ、1年前のiPhone5の約500万台を上回る大ヒットになった。

 発売10日前まで噂を否定してシラを切り通しサプライズを演出したNTTドコモは、これを好機にiPhone欲しさにナンバーポータービリティ(MNP)で他社に流出したユーザーを奪還し悲願のシェア50%回復を果たすべく「ドコモへおかえり割」という元ユーザー優遇の割引まで用意して臨んだ。しかし発売直後に新型iPhoneの購入者が選んだ携帯キャリアはソフトバンクが43.1%でトップ、KDDIは29.4%、NTTドコモは27.5%という結果(BCNランキング)で、iPhoneの入荷遅れも手伝ってドコモの目論見は見事に外れてしまった。それでも10月には契約者数の純減をストップさせている。

 話題独占の新型iPhoneを尻目に、2013年は端末メーカーのスマホ撤退が相次いだ年でもあった。NTTドコモは夏商戦でソニー<6758>のXperiaとサムスン電子のGalaxyの2機種をスマホの「ツートップ」に指名してプッシュ。冬春商戦ではサムスンを外してソニーのXperia、シャープ<6753>のAquos phone、富士通<6702>のArrowsの「スリートップ」に組み替えて臨んだが、結果を出せずに新型iPhoneに話題も売れ行きもさらわれた。この「エリート選抜戦略」は他のメーカーの反感を買い、「NECカシオ」ブランドのNEC<6701>は8月にスマホからの撤退を決め、9月にはパナソニック<6752>も個人向けスマホ事業からの撤退を決めた。スリートップにしてもタイミング的にドコモの新型iPhone採用の「当て馬」にされた格好になり、決していい思いはしていない。(編集担当:寺尾淳)