昨年末に国連児童基金(ユニセフ)と国立社会保障・人口問題研究所がまとめた報告書によると、日本の子どもの幸福度は先進31カ国中6位。教育水準が高いこと、健康的な食習慣を身に付けている子どもが多いことなどが高く評価された。子どもの幸福度に関しては、先進国の中でもトップクラスだ。一方で意外に感じるかもしれないが、日本の子どもは貧困率が高いことも指摘されている。
レポートによると、日本の子どもは「教育」と、肥満児の割合や飲酒率などから分析される「日常生活上のリスク」の分野でトップ。住宅の質や、国全体の殺人発生率などから評価される「住居と環境」では31カ国中10位と平均的だった。最も評価が低かったのは、子どもの貧困率などの「物質的豊かさ」で21位。まとめれば、日本の子どもは平均的な教育水準が高く、国際的に見て健康的な生活を送っているものの、貧困率の高さが際立つという結果になっている。
厚労省によると、日本の子どもの貧困率は15.7%(2009年)。実に6人に1人の子どもが貧困である。85年に10.9%だった子どもの貧困率は、24年間で約5%上昇した。
多くの国には、所得の累進課税や社会保障などの所得再分配システムがある。ところが日本では政府が所得を再分配する前と後で、子どもの貧困率がほとんど変わっていない(数年前まではむしろ悪化していた)。政府が介入しても、貧困状態にある子どもたちの多くを救うことができていないのだ。
日本の社会保障制度は、年金や医療・介護サービスなど高齢者向けが中心。生活保護も、受給者の半数は高齢者だ。日本はこれまで失業率が低かったために、勤労世帯向けの社会保障が手薄になっている。一方で、子育てにはお金がかかる。そのため若くして「一家の大黒柱」が働けなくなった子育て世帯では特に、貧困に陥るリスクが高まっている。こうした格差を是正し、子育て世帯への給付を手厚くする新しい再分配システムをつくらない限り、日本の「子どもの貧困」は解消されないだろう。(編集担当:北条かや)