1月13日にサントリーがアメリカのウイスキーメーカー「ビーム社」を買収したと発表した。ビーム社の全発行済株式を総額160億ドル(約1兆6500億円)で取得するという。結果、サントリーのスピリッツ事業と合わせて販売規模は年間43億ドルを突破し、世界で第3位のシェアとなる模様だ。
この取引は、両社の取締役会で全会一致の承認を得ており、今後ビーム社の株主ならびに規制当局の承認、その他必要な手続きを終了後、完了する予定だ。
サントリーは昨年の春からビーム社のバーボンウイスキー「ジンビーム」「メーカーズマーク」の販売をアサヒビールから引き継ぎ好調な売り上げを記録している。また、ビーム社はシンガポールをはじめ東南アジアでサントリー商品を販売。両社は日本国内外で非常に良好な関係を築いているという。日本国内のアルコール飲料の売上は、ほぼ20年にわたって減少傾向が続いている。今回の買収でサントリーブランドの北米、東南アジアでの展開にも期待が膨らむ。
ビーム社の取扱い商品の主だったものは、前述の2ブランドに加えて「ノブクリーク」バーボン、「カナディアンクラブ」ウイスキー、「ラフロイグ」シングルモルトスコッチなどがある。
しかしながら、今回の買収金額を巡って疑問の声もあがっている。買収に係る資金は、サントリーが保有する手元資金のほか、東京三菱UFJ銀行から融資を受けるとしている。ビーム社の2012年度の売上は約25億ドル、純利益は3億8000万ドル。「買収金額が売上の6.4倍に達し、買収額を回収できるのは数10年後」というのが懸念の声の代表だ。現在、米経済は好調で株式相場も長期的に上昇傾向だとされている。そのため、利益を上げている米企業を買収するには実際の株価よりもかなり高いプレミアムが必要だ。実際、今回の買収でサントリーは、1月10日付けのビーム社の株価よりも25%ほど高い金額を支払う。
昨年、サントリー非アルコール部門であるサントリー食品インターナショナルが上場し資金調達力が上がっているとはいえ、総額160億ドル(約1兆6500億円)という買収は財務面で課題だとする意見も多い。(編集担当:吉田恒)