【日経平均】ダボス会議の上昇を中国PMIが消し125円安

2014年01月23日 20:19

 22日のNYダウは41ドル安。足を引っ張ったのは前日取引終了後発表のIBMの決算で、10~12月期は純利益は6%増でも売上高が5.5%減で7四半期連続の減収になり、年間でも1000億ドルを割り込んで、株価は3.3%下落した。しかしコーチなどは決算数字が市場予測を上回っても下落しており、決算を織り込んで年末に高値圏に昇りつめた地合いの要素を考慮する必要がありそうだ。NASDAQは続伸。23日朝方の為替レートはドル円は104円台半ば、ユーロ円は141円台半ばで、前日夕方と変わらない水準だった。

 スイスで開催中のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)で安倍首相が基調講演を行い、国家戦略特区を突破口に規制緩和、成長戦略を推進するとともに「本年さらなる法人税改革に着手する」と国際公約。法人減税まで言及するとはちょっとサプライズで日経平均は79.67円高の15900.63円と15900円にタッチして始まった。最初は15900円より少し低いレンジの小動きで、TOPIXは1300を少し超える程度だったが、午前9時25分すぎから円安進行に伴ってどちらも急騰し日経平均は一時15950円を突破する。その後はおおむね15900円台前半、前日比100円高近辺で安定的に推移した。ところが10時45分すぎ、中国のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が6ヵ月ぶりに50を割り込んで12月よりも0.7ポイント低い49.6というネガティブサプライズ発生。ドル円は円高方向に逆戻りし日経平均は15900円を割り込み、11時7分には15829円まで下落した。マーケットの一寸先は闇。ダボス会議の上昇分を中国PMIがかき消した格好でTOPIXはあっさり1300割れしマイナスまで落ちたが、日経平均はマイナスまでは下がらず、少し戻して前引けは15858円だった。

 しかし後場の日経平均は15800円を割り込んでマイナスで再開。15800円前後の狭いレンジで動き、プラスにタッチしても定着しない。午後1時台になると先物主導でズルズル下がり続け、2時1分に15700円の安値をつける。それでも2時台は15700円台を維持して安値もみあいだったが、大引け9分前には15700円を一時割り込み、終値も結局125.07円安の15695.89円と15700円台を守れずに終わり3日ぶり反落。3ケタ高から3ケタ安まで動いたので日中値幅は268円もあった。TOPIXは日経平均よりも下落幅が大きくなり-12.11の1287.52。売買高は29億株、売買代金は2兆6737億円だった。

 値上がり銘柄は215、値下がり銘柄は1504で東証1部全体の84.5%を占める全面安。業種別騰落率は全業種マイナスで、下げ幅が小さいのは電気機器、石油・石炭、食料品、保険、精密機器、ゴム製品など。下げ幅が大きいのは金属製品、電気・ガス、情報・通信、陸運、鉄鋼、不動産などだった。

 日経平均採用225種はプラス35銘柄、マイナス184銘柄。プラス寄与度1位は富士フイルムHD<4901>で+4円、2位は京セラ<6971>で+3円。マイナス寄与度1位は後場ズルズルと306円安まで下落したソフトバンク<9984>で-36円。2位はKDDI<9433>だった。

 安倍首相の法人減税国際公約発言は前場に金融関連銘柄を刺激し、みずほ<8411>は一時6円高で昨年来高値を更新したが終値は3円高。後場に売られた三菱UFJ<8306>は6円安、三井住友FG<8316>は71円安だった。野村HD<8604>は6円安。自動車はトヨタ<7203>84円安、ホンダ<7267>26円安、マツダ<7261>は9円安で、三菱自動車<7211>は売買高、売買代金とも8位と商いは多いが7円安で終わっている。

 電機大手ではNEC<6701>がシティグループ証券がレーティングを引き上げ売買高5位に入り14円高と逆行高だったが、ウォールストリートジャーナルが「IBMのサーバー事業を買収検討か」と報じた富士通<6702>は12円安。シャープ<6753>は競争激化で採算が悪化したアメリカでの太陽電池生産からの撤退が報じられ8円安。サード・ポイントがPS4をほめた上で「パソコンとテレビをリストラせよ」と言い出したソニー<6758>は8円高で、パナソニック<6752>は5日続落から切り返して19円高だった。

 日本航空電子工業<6807>は今期業績見通しの修正を発表し、売上高は50億円上方修正、純利益は13億円上方修正し前期比84%増。昨年10月の防衛省への過大請求問題で違約金が発生する件は織り込んでいないが210円高で値上がり率5位に入った。富士フイルムHDは4~12月期の営業利益が5割増の980億円の観測で103円高、ミネベア<6479>は4~12月期の営業利益が2.2倍の230億円の観測で17円高で、3銘柄とも昨年来高値を更新した。

 コマツ<6301>は前場途中までプラスだったが中国PMI悪化の波をもろにかぶり11円安。日立建機<6305>は28円安。クボタ<6326>は一時35円高で上場来高値を更新したが終値は4円高にとどまった。「国土強靱化」で各高速道路会社が総事業費3兆円で全国の高速道路網の約1割を改修するニュースで、1円高の三井住友建設<1821>が売買高11位、4円高の日本橋梁<5912>が同15位に入り、久しぶりに中・小型建設株が商いを伴って上昇していた。

 アスクル<2678>は190円高で昨年来高値を更新し値上がり率15位。リンガーハット<8200>が「8番ラーメン」のハチバン<9950>を買収という報道で、東証は確認のためハチバン株の取引を9時から1分間停止した。リンガーハットは1円高、ハチバンはストップ高比例配分の80円高で昨年来高値を更新。今週にわかに登場した「セルロースナノファイバー関連銘柄」は、後場に新工場建設を発表した第一工業製薬<4461>がストップ高の80円高で値上がり率1位、星光PMC<4963>がストップ高比例配分の150円高で値上がり率4位と、ともに昨年来高値更新で上昇の勢いが止まらない。

 恋は神代の昔から女子の最大の関心事でバーチャル恋愛ゲームのボルテージ<3639>は大幅続伸し一時ストップ高の318円高で値上がり率2位。任天堂<7974>は175円安、ヤフー<4689>は20円安と反落したが、エイチーム<3662>は売買高4位と大商いを伴う940円の大幅上昇で値上がり率6位、モバイルクリエイト<3669>は315円高で値上がり率10位、ネット選挙関連のGMOインターネット<9449>は96円高で値上がり率12位でともに昨年来高値を更新し、グリー<3632>は60円高で値上がり率13位。新興市場は「軍勢RPG蒼の三国志」が300万ダウンロードを突破し五関に六将を斬る勢いのコロプラ<3668>は前場に昨年来高値を更新しながら後場崩れて45円安。ミクシィ<2121>は160円高と大きく上昇した。

 値下がり率1位はカジュアル衣料小売のアダストリアHD<2685>でストップ安の700円安。営業利益を46億円下方修正した業績見通し、期末配当を70円から25円に変えた配当見通しの下方修正を嫌気された。

 この日の主役は日本電産<6594>。前日大引け後の「決算冬まつり」は4~12月期は売上高24%増、純利益59%増。今期業績見通しの売上高は300億円の上方修正、純利益は10億円の上方修正で560億円と最高益更新見込み。ワッショイ、ワッショイと期末配当見通しを10円引き上げて55円、通期で100円として自社株買いまで繰り出す威勢の良さ。今期3回目の業績上方修正を背景に「来期はもっと上を望める」という強気の永守節もアナリストに大ウケだったようで、株価は後場も全面安に逆行して620円高で値上がり率14位に入り、もちろん昨年来高値更新。110円高の村田製作所<6981>と22円高のアルプス電気<6770>が昨年来高値を更新し、太陽誘電<6976>も39円高になるなど同業の電子部品メーカーにも連れ高のお裾分け。自動車の電動パワステ用モーター、家電用静音モーターの絶好調に加えパソコンのHDD用モーターも「XPサポート打ち切り特需」で復活すれば、今期も来期も日本電産が向かうところ敵なし、になりそうだ。(編集担当:寺尾淳)