安倍総理の思想が色濃く出たのが教育再生。安倍総理は「公共の精神や豊かな人間性を培うため、道徳を特別の教科として位置づけることとし、教員養成など準備を進めていく」と道徳教育の教科化や教員養成に努める考えを明確にした。道徳の中身がどのような価値観に基づく、どのような内容になるのか、道徳教育が悪い、あるいは不必要というのではなく、その中身にこそ、今後、注視していくことが必要だろう。
一方、教育改革で評価できる内容もあった。安倍総理は「2020年を目標に外国人留学生の受入数を2倍以上の30万人へ拡大する。国立8大学では今後3年間で外国人教員を倍増する。外国人教員の積極採用、英語による授業の充実、国際スタンダードであるTOEFLを卒業の条件とするなど、グローバル化に向けた改革を断行する大学を支援する」と表明。
「意欲と能力のある全ての若者に留学機会を実現する」とし「学生の経済的負担を軽減する仕組みを創り、2020年に向けて日本人の海外留学の倍増を目指す。グローバルな舞台で活躍できる人材へと育んでいく」と地球規模で活躍できる人材、視野の広い人材育成に熱意を見せたことや、大学や大学生の質の低下が問題化なる中で、質の向上を目指す姿勢に賛同と期待を寄せる国民は多いだろう。
注目点では、沖縄の位置づけ。安倍総理は「アジアと日本をつなぐゲートウェイ」と語り「アジアとの物流のハブであり、観光客を迎える玄関口として那覇空港第二滑走路は日本の成長のために不可欠」とした。「2019年度末に供用を開始する」と時期を断言。
また沖縄は「高い出生率、豊富な若年労働力など成長の可能性が満ち溢れる」とし「21世紀の成長モデル。2021年度まで毎年3000億円台の予算を確保し、成長を後押しする」とした。
米軍普天間飛行場については「名護市辺野古沖の埋め立て申請が承認されたことを受け、速やかな返還に向けて取り組む」と語り「移設までの間の危険性除去が極めて重要な課題で、オスプレイの訓練移転など県外における努力を十二分に行う」と強調。「できることはすべて行う姿勢で取り組む」と語った。
逆にいえば、普天間飛行場の辺野古移設が唯一の策と判断している日米両国政府にとって、この部分において変更はできないということもアピールしたものになった。譲れるところは譲るが譲れないところは譲れない姿勢を示したといえよう。
集団的自衛権の行使に関する考えでは「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告を踏まえ、対応を検討していく」とした。安倍総理は集団的自衛権の行使容認に終始一貫して慎重な審議が必要で、時間をかけて議論していくべきとする与党・公明党の理解を得ることから始めなければならず、公明党が集団的自衛権の行使容認の是非に国会において最も重要な役割を担うことになる。
また、憲法改正を経ずに可能なのか、法的安定性の問題を含め、国民的議論の広がりなしに「解釈変更」を時の政府・与党だけで行ってよいのか。国の安全保障のあり方を大きく変える問題だけに、やはり慎重審議が求められる。
一方で、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会は4月にも報告を出すもようだが、オバマ米大統領のアジア訪問時期も絡んで、安倍総理の対応や議論の成り行きを注視する必要がある。(編集担当:森高龍二)