米Googleが開発中のメガネタイプの拡張現実ウェアラブルコンピュータ「Google Glass」が、いよいよ4月にも発売されるのではないかと噂になっているが、同社は現地時間の1月16日、そのGoogle Glassよりもさらに進んだ、実用的なプロジェクトが進行していることを発表した。そのプロジェクトとは、糖尿病患者用に開発された医療用スマートコンタクトレンズだ。ソフトコンタクトレンズの二層の膜の間に無線チップとアンテナ、血糖値センサー、そしてLEDライトが仕込まれている。一秒ごとに涙の成分を計測し、急激な血糖値の変化があるとLEDライトが点灯して患者本人に警告を与えるという。
Googleには、「魔法のような、不可能と思われるアイデアを科学技術の力で実現すること」をコンセプトにした「Google X」という部門が存在する。Google Xでは、同社のCEOであるラリー・ペイジ氏がアンディ・ルービンに贈った「もっとMoonshotsを」というメッセージにちなみ、「途方もない」という意味で「ムーンショットプロジェクト」という言葉を多用し、Google Glassや自動運転カー、気球式インターネット網など、数々の途方もないプロジェクトを進めている。今回の医療用スマートコンタクトレンズも、そんなムーンショットプロジェクトの一つだ。Googleでは2013年9月、老化現象や老齢疾患に取り組むバイオテクノロジー企業「Calico」を設立するなど、医療の分野にもビジネスを拡大する動きをみせている。
2012年後半に、ナノエレクトロニクス研究分野では世界トップレベルのコンソーシアムであるベルギーのimec(アイメック)が、コンタクト型の液晶ディスプレイを開発していることを発表して話題になったが、今回のグーグルのスマートコンタクトには映像のシステムは含まれていないようだ。だが、どちらも開発段階のため今後どのように改良されるか分からない。imecは情報通信分野をはじめ、ヘルスケアやエネルギー技術について世界中の企業と共同研究を行っていることで知られている企業。Googleの方も現在、製品化にあたってのパートナー企業を探しているという。実際、imec側でもコンタクト型の液晶ディスプレイの医療用用途や、レンズ上に様々なアプリケーションを表示するGoogle Glassのコンタクト版のようなツールに発展する可能性も示唆しており、Googleとコンセプトは似通っている。Googleによると、現在は米国の医療関連製品の認可当局である食品医薬品局(FDA)と協議を重ねている段階で、実用化にはまだ遠いとのことだが、もしも両社が共同開発を行うようなことになれば、未来は大きく変わるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)