「スイミングを頑張っているお子さんの笑顔や躍動感あふれる瞬間を写真で残しませんか?」子供に水泳を習わせている人なら、このような宣伝文句を目にしたことがあるかもしれない。プロのカメラマンがスクールに出張し、子供たちの水中写真を撮影。保護者は回覧されるアルバムを見て、好きな写真を購入できる。価格は1枚600円ほどからで、カレンダーにすると1枚1500円、ポスターサイズになると数千円する場合もある。高額でも、保護者からは注文が絶えない。
背景には少子化と競争激化の中、少しでも収益源を確保したいスイミングスクールの思惑と、売上減に悩む写真館の現状がある。
リクルートライフスタイルの調査では、子供たちの習い事1位は「水泳」で35.9%。2位の「ピアノ」(23.5%)を大きく引き離す。子供の水泳ブームは70年代に始まり、当時は小学生の2人に1人が水泳を習っていたという(『スポーツマーケティング入門』大野貴司著)。70年代当時に小学生だった子供たちが今、親となり、「自分も習っていたから」「泳げずに悔しい思いをしたから」と、我が子をスイミングに通わせる例も多いのだろう。
スイミングスクールでは、レッスン中の子供の姿をガラス越しに見学できる。ただし写真撮影は不審者対策のため「原則禁止」。その代わり年に1度のペースで写真館に依頼し、プロのカメラマンによる「撮影会」を実施するケースが目立つ。
多くの写真館は近年、デジカメの普及や少子化、スタジオアリス等の大手チェーンに押され、売上減に悩む。そこで「大手にはできないビジネスを」と、こうした「スクール撮影」に参入するケースもあるようだ。十数年の実績をもつ都内の写真館では、「会員数500名以上のスクールには無料で出張する。売れた写真の25~30%がスクールさんの利益になる」という。1枚1000円の写真が200枚売れた場合、20万円の売上のうち14万円が写真館、6万円がスクールの取り分となる仕組みだ。多くの写真を売るには「スクールさんも保護者の皆さんに売り込んで頂くことが重要」という。写真館とスイミングスクールの新たな商機ともいえる、「スクール撮影」。今後は水泳以外にも広がっていくかもしれない。(編集担当:北条かや)