6年ぶりに上昇の離職率、救う手立ては?

2014年03月01日 20:14

 アイデムが先日発表した2015年度就職活動に関する調査によると、企業規模に対しては大企業を志望する学生は全体の50.9%となっている。また、男女別に見てみると、男性は大企業志向が高いのに対し、女性は大企業よりもむしろ、中小企業を望む傾向がみられるという。

 また、厚生労働省が昨年12月に発表した、新規大学卒業就職者の産業別離職状況をみてみると、大卒新規採用者の3年目の離職率では31.0%となり、6年ぶりに上昇している。

 また、平成24年度新卒者の1年以内の離職率は、およそ13パーセントとなっており、業種別では、製造業が約6パーセント、情報通信業約8パーセント、小売業約15パーセント、宿泊業、飲食サービス業約22パーセント、建設業約12パーセント、医療、福祉約13パーセントとなっている。

 この就職難といわれる時代に、若者たちはどうして、せっかく手に入れた職場から離れようとするのだろうか。総務省が2012年に公表した「就業構造基本調査」には離職者数とその理由が掲載されているが、それをもとに正規雇用職を辞した者の離職理由を考察すると、「労働条件が悪い」「低賃金」についで「自分に向いていない」という理由が多くを占めていることが分かる。また「先行きが不安」というのも大きな理由となっているようだ。また、大企業の離職者においては、労働条件や収入面での不満はそれほど大きくはないと思われることから、「自分に向いていない」「他に活躍できる場があるのではないか」などの心理的な理由が大きいのではないかと推察できる。

 確かに、優秀な人材や能力を活かしきれないのであれば、本人はもとより、採用している企業にとっても不幸なことだ。そして、その結果が離職や転職であれば尚更である。

 そんな中、ヤマハ発動機<7272>が非常に面白い人事制度を行っている。同社が1998年から導入している独自の人事制度「セルフ・バリュー・チャレンジ」は、文字通り、自分の可能性や成長を求める社員に挑戦の場をつくり、その成長を支援する社内制度だ。各部門から寄せられる新規プロジェクトなどの公募テーマに対して、「我こそは」と、チャレンジ精神を持って臨めば、現職とは全く関係のない分野でもエントリーできるというもの。適性やスキル、キャリア等の総合的な判断はなされるものの、採用されれば会社を離れることなく、才能の発揮できる新たな部署での挑戦を始められる。また、特筆すべきは、その応募から決定までのプロセスに原籍となる職場(上司)が一切介在しないこと。組織のしがらみに縛られることなく、個人のキャリアデザインを支援するために設けられた仕組みとなっているのだ。これまでに、「官民人事交流実施による当社渉外機能強化」というテーマに応募して海外営業部門から渉外部門へ、さらに海外の日本大使館に駐在した人や、経理部門から産業用無人ヘリコプターの営業部門に移った人もいるそうで、異動が実現した社員は、これまでおよそ250人にのぼるという。つまり、ヤマハ発動機は250人もの優秀な才能を社外に流出させることなく、再発掘したのだ。

 早期離職に対して日本は批判的な見方もあるが、自分に合わないと感じて早目に辞めるのも一つの選択肢だ。いくら収入が多くてもミスマッチな職場で一生我慢し、社蓄などと揶揄されるような人生は、本人にとっても会社にとっても不幸でしかない。とはいえ、何の保障もない時代。出来れば転職は避けたいと願うのも本音ではないだろうか。社内でスキルアップや能力を開花させることができれば、本人のやりがいも大きいし、企業側にとっても大きな利益を生み出す原動力になるはずだ。これから新規で就職を目指す人、やむを得ず転職を考えている人は、業種や収入だけでなく、受ける会社の人事制度を事前に調べるのも一つの方法ではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)