今月3日菅義偉官房長官は会見で「河野談話」について、「政府の基本的な立場は談話を継承する」と述べた。しかし先月28日の衆院予算委員では「検討チームをつくり、掌握したい」とも述べている。「継承」するなら「検証」は必要ないし、「検証」するなら「継承」したことにはならないと考えるのが、常識的な判断だと思うが、この2つは矛盾しないと菅義偉官房長官は語った。1日に行われた韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が「3.1独立運動」記念式典での演説において「過去の過ちを認められない指導者は未来を切り開けない」「歴史の真実は生きている方々の証言だ。政治的利害から認めないなら(日本は)孤立を招く」などと語ったことに配慮しての「継承する」発言だと思われる。
いずれにしても政府は検証チームを設置し、「河野談話」を検証する意向に変わりはないと見られる。先月20日の衆院予算委員会で、当時の官房副長官石原信雄氏が「(元『慰安婦』とされる女性らの)証言の事実関係を確認した裏づけ調査は、行われておりません」と述べたことや談話の作成過程で韓国政府とすり合わせを行った可能性もあるとし、検証の必要性が高まってきた。さらに「河野談話」を見直す理由として挙げられているのは、明確な証拠がないこと。実際、産経新聞は対象者の名前や出身地、生年も不明確で信頼できないことを取材で明らかになったとしている。政治決着を急いだ結果の「虚構の談話」と断罪している。
一方で「河野談話」の見直しに批判的な声もある。村山富市元首相「軍関係者や政府の資料を調べて、総合的に判断したと思う。根拠もなく軽はずみに作ったものではない」と主張。また「歴代首相が継承して、ある意味で国際的な定義になった。否定するのは無理だ」「見直しは国際的な反発を招く」ことを強調した。
政府が「検証」へ踏み切らせたものには世論の後押しもあるようだ。産経新聞とFNNの合同世論調査では検証すべきとした意見が6割を超えた。世論に留意するのはいいとしても、米国との関係は留意しているのか。海外の諸国にとっての関心事は強制連行があったか、なかったかよりも日韓の関係の行方ではないのか。村山富市元首相が懸念するように、再び米国をはじめとする海外諸国の国際的な評価を落とすことになるのではないだろうか。靖国参拝で米国がどう反応するのかも読めなかった安倍内閣だが、今度は米国の反応も考慮した上での「検証」であることを願いたい。(編集担当:久保田雄城)