「戦後教育はマインドコントロールだった」と、先日の国会答弁で答弁した安倍首相が意欲を燃やす教育政策とはどんなものなのか。昨年11月に発表された「教科書改革実行プラン」の教科書検定基準では、政府見解や確定判例がある場合はそれを踏まえた記述にする、諸説がある場合はバランス良く記述することなどを、教科書検定基準に盛り込んだ。これには南京事件や従軍慰安婦問題が念頭にあると思われる。
従来はこうした記述があれば、検定意見というかたちで修正が求められていたことが、明確に基準として盛り込まれた。例えば南京事件の犠牲者数の記述で、「20数万人が犠牲になった」という記述では、ひとつの説しか採られておらず、「20~10数万人、またはそれ以下など諸説ある」という表現に修正するよう検定意見として求められたりしたことは今までもあったことで、運用面では実質変わってないともいえる。しかし、あえて明記することは戦前の国定教科書と変わらないとの批判や、政権が変われば変更することが予想される政府の見解を教科書に載せるべきなのかという疑問も出されている。
首相の教育政策ブレーンで、政府の教育再生実行会議委員を務める八木秀次・高崎経済大教授は今までの議論の蓄積があるから、政府の見解が変わることはないという。また複数の説を教えないことも、教育の機会均等の憲法にも反すると発言。逆に竹島〈島根県〉や尖閣諸島(沖縄県)の領土問題については両論の併記は許されない。どの国の領土なのか不透明な表記をしている教科書については明確に政府の見解を載せるべきと主張。最も日本の領土問題の相手国の韓国、中国、北方領土問題のロシアなども、自国の教科書では、明確に自国の領土であることを主張している。
もうひとつの改革は教育委員長と教育長を自治体の首長任命による新教育長に一本化。「総合教育施策会議」(仮称)を新設し、自治体の首長が主宰する。教育委員会への国の関与が強化され、政治的中立性が脅かされるのではないかとの懸念もあるが、今まで、「いじめ自殺事件」など度重なる教育現場での事件で、教育委員会が正常に機能してこなかったことへの反省から生まれた改革ともいえる。「戦後教育のマインドコントロールから脱け出す必要がある」と語る安倍首相の教育改革。戦前回帰、右傾化としばしば揶揄される安倍内閣だが、世論調査での国民の支持率はまだまだ高い。どこまで安倍内閣を国民が支持するのか見守っていきたい。(編集担当:久保田雄城)