【日経平均】中国に土壇場でひっくり返され結局14円安

2014年03月13日 20:25

 12日のNYダウは11ドル安で3日続落。一時91ドル安まで売られたが、終了前にエネルギー、ITなどが買い戻されNASDAQは5日ぶりに反発した。中国は太陽光発電機器メーカーの上海超日太陽能科技に続き、同じ太陽光関連で上海上場の保定天威保変電気も社債デフォルト懸念で社債と株式の取引が停止されるなど、何が飛び出すかわからない「伏魔殿」状態。それがウクライナ情勢とともに世界の金融市場をリスクオフさせた。リスク回避の円買いが起きたが、13日朝方の為替レートはドル円が102円台後半、ユーロ円が142円台後半に踏みとどまっていた。

 取引時間前に発表された1月の機械受注は市場予測の7.2%増を上回る13.4%増。12月の15.7%減のネガティブサプライズからのV字回復で、今週はバッドニュース続きなのでポジティブな指標にはホッとする。シカゴCME先物清算値は14815円、取引時間前の外資系証券の売買注文動向は小幅の売り越しだったが、日経平均は17.33円高の14847.72円で始まる。午前9時台は前日終値の14830円と14900円の間のレンジで小動き。底堅いが上値は限定的。400円近く下落した前日の反動で自律反発してもV字回復で15000円台に届かないのは、メジャーSQ前の薄商いでエネルギー不足だから。10時を過ぎると50円高の14880円近辺で安定する。上海も香港もプラスで始まっても10時30分すぎから日経平均は14840円近辺まで下落する。しかしマイナスまでは落ちない。11時台になると上昇して11時25分に14900円にタッチし、前引は14899円だった。TOPIXは前場たびたびマイナスにタッチしていた。

 中国・北京では全人代が閉幕。後場の日経平均は前引水準で始まったが、午後1時前に14860円あたりまで急落するなどせわしなく動く。それでも徐々に値を切り上げ、2時前には14900円台に乗せて2時12分に14919円まで上がるが、終盤に「伏魔殿」から魔物がゾロゾロ出てきた。2時台の後半に伝わった中国の経済指標は、固定資産投資も工業生産も小売売上高も市場予測を下回るバッドニュース三兄弟。毒気に当たってドルも下落し、日経平均はたちまちマイナス圏まで急落。14800円を割り込んで14790円まで下げた。そこから懸命にプラス圏まで戻す動きもむなしく、大引けは小幅マイナスで14.41円安の14815.98円と続落した。日中値幅は129円だった。TOPIXは-3.48の1203.46。売買高は16億株、売買代金は1兆6317億円で、どちらも今年最低だった。

 131円高のソフトバンク<9984>が後場に上昇して日経平均を支えたのは、英国のフィナンシャルタイムズが中国の子会社アリババについて「アメリカで上場する用意ができている」と報じたのがきっかけだった。後場の日経平均が持ち上げられたのも、土壇場でひっくり返されたのも、どちらも「伏魔殿」中国がからんでおり、皮肉にも上海総合指数はプラスで引けていた。

 値上がり銘柄は733。値下がり銘柄は896。業種別騰落率はプラス9業種、マイナス24業種で、プラス上位はパルプ・紙、空運、ガラス・土石、情報・通信、その他製品、繊維など。マイナス下位は海運、不動産、証券、倉庫、銀行、ゴム製品などだった。

 日経平均225種の値上がりは68銘柄、値下がりは145銘柄。プラス寄与度1位はソフトバンクで+15円、2位は東京エレクトロン<8035>で+4円。マイナス寄与度1位は珍しくホンダ<7267>で-3円、2位はファナック<6954>で-2円だった。

 メガバンク、大手証券は全てマイナス。自動車もトヨタ<7203>8円安、ホンダ44円安などマイナスが並んだが、富士重工<7270>は9円高。電機大手は富士通<6702>の5円高以外は小幅安が並んだ。日東電工<6988>はシティGが3月の売上増を予想して99円高になる一方、日本電産<6594>は売買代金11位でも420円安の大幅安。アップル関連のフォスター電機<6794>はみずほ証券がレーティングを引き下げ62円安。半導体リードフレームの三井ハイテック<6966>は前日に1月期決算を発表し経常利益55%増で従来予想を大きく上回ったが、今期見通しは一転25%の減益で失望売りを呼び53円安、値下がり率1位に甘んじた。

 NTT<9432>は105円高で昨年来高値を更新し売買代金7位。九州電力<9508>は前場、「原子力規制委員会が新規制基準で川内原発1、2号機の優先審査を開始」というニュース速報が入りマイナス圏から26円高まで一気に上昇したが終値は30円安。夏にも再稼働の見通し。柏崎刈羽原発は見通しが立たず東京電力<9501>は11円安。原発関連の木村化工機<6378>は18円高でも日本製鋼所<5631>は6円安で反応薄だった。

 朝の機械受注の大幅改善で牧野フライス製作所<6135>は16円高。しかしDMG森精機<6141>は52円安。淀川製鋼<5451>は後場いきなりストップ高までいき昨年来高値更新。終値は17円高で値上がり率12位だった。ヨド物置を出しているので消費増税直前の買いだめ特需が材料かと思いきや、稲葉製作所<3421>は8円高で別段変わりなし。

 LME銅先物価格は反発したが、コモディティ価格に影響される商社株の三井物産<8031>は46円安で4日続落。売買高8位、売買代金2位と商いは活発だった。中国経済不透明を背景にバルチック海運指数が大幅下落し商船三井<9104>は9円安、日本郵船<9101>は8円安と不振で、海運は業種別最下位に落ち込んだ。治験支援のエムスリー<2413>は今期末の配当を100円増の1300円とし、同時に3月末の1対200の株式分割の実施、100株の単元株採用を発表。4.28%上昇の13500円高で値上がり率8位だった。

 ヤマダ電機<9831>は2月の全店売上高が今期最大の26.7%増で7ヵ月連続の2ケタ増で12円高。売買高11位。駆け込み需要は大雪に負けなかった。ファミリーマート<8028>は4期連続で経常最高益を更新という業績観測記事が出たが95円安。ハイデイ日高<7611>は12期連続最高益観測で3円高。ゼンショーHD<7550>はこの日が公募増資の受渡日で、51円安で3日続落し昨年来安値更新。値下がり率12位だった。

 こんな日でも値上がり率1~4位は7%を超える上昇。1位のルネサスエレクトロニクス<6723>は53円高、2位の日本コンベヤ<6375>は10円高、3位の日本M&Aセンター<2127>は560円高、4位のスター精密<7718>はみずほ証券がレーティングと目標株価を引き上げ80円の大幅高になった。

 ダイキョーニシカワ(DNS)<4246>が東証1部に直接新規上場。マツダ系の部品メーカーで公開価格1600円に対し9時19分に1799円の初値がついた。終値は1899円。前日にマザーズに新規上場したエンバイオHD<6092>は2日目の9時、公開価格580円の2.26倍の1311円の初値がつき、一時ストップ高の人気で終値は1611円だった。

 この日の主役は帝人<3401>。炭素繊維複合材をエアバス次世代中型機に年内供給と報じられた。従来もエアバスに供給していたが、付加価値の高い骨格部分の一次構造材への採用は初で、量が出るという。炭素繊維は東レ<3402>、帝人、三菱ケミカルHD<4188>の子会社の三菱レイヨンの日本勢3社が世界シェアの約半分を占め、ハイエンドの航空機用CFRPではシェア約7割という「日本のお家芸」。これまでボーイング787にも供給する東レが炭素繊維関連の代表とみられてきたが、このニュースで「帝人=エアバス」という対抗軸ができ帝人の存在感が大きく増した。帝人は13円高まで上昇し終値は1円高で売買高13位、東レは3円高、三菱ケミカルHDは1円高だった。(編集担当:寺尾淳)