日本ぐらし館 木の文化研究会が、18日ヤクルトホールで第3回シンポジウム「住まい手からみる木造住宅の未来」を開催した。
一戸建ての家を建てたり、購入する時は、一般的には木造住宅となることが多いだろう。これはやはり日本の国土の三分の二が森林だから、木材が豊富だからだろう、と思ってしまう。しかしシンポジウムで京都府立大学大学院教授の高田光雄氏から、木材の自給率は28%に過ぎず、ほとんどは輸入木材に頼っている現状について紹介された。
ドイツにおける環境史学の創始者の一人として著名なヨアヒム・ラートカゥは著作「木材と文明」の中で、「日本ほど高い木の文化を持っている国はない」と書いているし、また木材工学者の千葉大学名誉教授は、小原次郎は著作の「木の文化」の中で、「日本民族の木材に対して持つ愛着の深さと感受性の鋭さとは、他の民族と比較にならないほど強いものがある。その由来は生きた樹木を見て感じる日本の信仰にまでさかのぼらないと、本当によく理解できない」と述べている。しかし、今やハードの面では、「木の文化の国」は衰退していると言わざるを得ないだろう。それではソフトの部分ではどうだろうか。
居住文化は 木造住宅だからこそ生まれたのではないだろうか。居住文化とは、三つの繋がりから出来ていると高田氏は説く。それは、まち、自然、人である。これらと融合することで、居住文化は進化し、そこに住まう人々の人生が充実していくとしている。
高田氏は、また大切なのは、住み心地ではなく、住み応えだと述べている。つまり快適さは、住宅が一方的に住まい手に与えるものではなく、住まい手も住宅に関わっていく必要がある。相互作用の構築が望まれる訳だ。つまるところ、メンテナンスフリーではなくメンテナンスのしやすい住宅が良いとのことだ。そして、それに最も相応しいのが柔軟な構造を持った木造住宅であり、居住文化の担い手としての木造住宅の重要性が、これからも今以上に増していくのだろう。また閉会の挨拶で、全国の工務店ネットワーク「ジャーブネット」を主催する宮沢俊哉氏は、住まいはつくり手、業界関係者だけでなく、住まい手にも積極的に関わって欲しい。今後もこうした発信を続け、皆で考えられる機会にしていきたいと述べた。(編集担当:久保田雄城)