本田技研の英国法人であるホンダモーターヨーロッパ・リミテッドは今年3月、ジュネーブショーで次期欧州市場向け「シビック TYPE R」のコンセプトモデルを発表した。新型TYPE Rは2015年に欧州で発売される予定で鋭意開発が進められているという。
この次期TYPE Rは“歴代最高のシビックTYPE R”を目指し、独ニュルブルクリンクサーキットで開発テストを行なった。そのテストの結果を反映したエクステリアデザインを採用し、ダウンフォースを高めて空気抵抗を減らすフロントバンパーや、LEDコンビネーションランプを内蔵したリアスポイラーなどを組み合わせる。同時に20インチホイールやフロントスポイラー、赤く塗られた大径ブレンボキャリパーを装備、スポーツ性を強く訴求するデザインを随所に採用した。
注目すべきは、その搭載エンジンだ。昨年秋に発表した新世代パワートレーン技術「EARTH DREAMS TECHNOLOGY(アース・ドリームス・テクノロジー)」のひとつとして開発中の2リッター直噴ガソリンターボエンジンを搭載。出力&トルクは280ps(208kW)/40.8kg.m(400Nm)以上を目指している。加速性能と燃費性能、そして環境性能を高次元でバランスしているという。もちろん。今季から適用される欧州排ガス規制「Euro 6」をクリアする。
ホンダは「EARTH DREAMS TECHNOLOGY(アース・ドリームス・テクノロジー)」のエンジン群として、小型・中型車に搭載予定の直噴ガソリンターボエンジン「VTEC TURBO」を3機種発表している。3機種ともに可変バルブタイミング機構を採用、高流動燃焼を用いた直噴ターボ過給による出力向上を図ったことで、排気量をダウンサイジングした。
なかでも、TYPE Rに搭載する直列4気筒2リッター直噴ガソリンターボエンジンは、VTEC、高出力型ターボ、直噴、高性能冷却システムにより高出力、高レスポンスを実現したユニットだ。同時に発表した直列4気筒 1.5リッター直噴ターボエンジンと直列3気筒1リッター直噴ターボエンジンもVTECを採用し、低フリクション化を図ったエンジンをベースに、低イナーシャ高応答ターボチャージャー技術で、従来の自然吸気エンジンをしのぐ高出力&高トルクと低燃費を高次元で両立した。それぞれ150kW/260Nm、95kw/200Nmの出力&トルクを得たという。
ホンダは1960年代に日本の自動車メーカーとして初めてF1グランプリに参戦し、2度の優勝を果たした。が、量産車の排出ガス規制技術開発優先を理由に撤退。1980年代に復帰後は、複数のチームにエンジン供給を行ない、「ホンダ最強伝説」を築いた。が、ここでもバブルがはじけて撤退した。21世紀になって、ホンダチームとしてシャシーも開発するとしたものの成果を挙げられず3度目の撤退となった。?
しかし、来年、名門マクラーレンにエンジンを供給することでF1GPに4度目の挑戦を行なう。チーム・マクラーレンとホンダ・エンジンといえば、アイルトン・セナとアラン・プロストを擁した1988年、16戦中15戦を制したF1史上最強コンビ。あの伝説のチームが帰ってくる。
そして今季からF1エンジンのレギュレーションが変わり、搭載エンジンは1.6リッターV型6気筒ターボで、1988年当時のエンジンに酷似している。しかも、ホンダが得意とするハイブリッド仕様だ。
ホンダF1復帰とともに登場する予定のシビックTYPE Rは、「公道のレーシングカー」をコンセプトにデザインしたという。「TYPE Rはホンダ・レーシング・スピリットを表す。モータースポーツへの情熱で作られている」とチーフスタイリストが語ったように、数々のエアロパーツは単なるデザインのためではなく、ニュルブルクリンクでのテストからフィードバックした必要不可欠なパーツなのだ。
日本には何台のTYPE Rがやって来るのだろうか?(編集担当:吉田恒)