海外から日本のコンピュータに簡単にアクセス 通信速度が100倍以上に

2014年04月12日 22:12

 現在、様々な分野でグローバル化が進んでいる。特にビジネスではインターネットの普及により、もはや国境の壁はない。とはいっても、我々は日本人だし、活動の拠点は日本である。海外とのやり取りや海外から日本の拠点のコンピュータにアクセスしなければならない場合も多い。この場合、海外と日本のコンピュータ回線のインフラの違いより、日本と同様には使用できないという障害があった。

 日立製作所<6501>は9日、海外の設計・開発・研究拠点から、日本に設置されたスーパーコンピュータなどの技術計算環境を日本国内の拠点と同様に利用できる基本技術を開発したと発表した。

 日立が有するネットワーク高速化技術とデータ圧縮技術を組み合わせて開発技術だ。回線帯域の大きい日本・米国拠点間のほか、回線帯域の小さい日本・インド拠点間を結ぶWAN(Wide Area Network)においても、従来比100倍以上の高速通信を実現した。これにより、米国やインドにおいても、日本に設置された技術計算環境を利用することが可能となる。

 同社は2015中期経営計画において、海外売上高比率を50%超まで拡大する目標を掲げるとともに、事業構造改革(Hitachi Smart Transformation Project)における柱の一つとして「IT・業務システムのグローバル標準化・集約化」を掲げている。設計・開発・研究業務の海外現地化の促進においては、日本と同様にシミュレーションツールやスーパーコンピュータなどの技術計算環境を整え、信頼性や性能の確保が必要。

 しかし、海外の開発拠点ごとに技術計算環境を構築するためには多大なコストがかかる。また、海外から日本にある技術計算環境を利用する際は、海外と日本の間で大規模な設計データや計算結果を転送する必要があるため、データ転送に多大な時間がかかるという課題があった。

 今回日立は、米国とインドの拠点を対象として、数ギガバイトから大きいものでは数テラバイトにのぼる設計データやシミュレーション結果を拠点間で共有する技術計算環境を構築するために、データの転送時間を大幅に短縮可能な高速転送技術を開発した。

 この技術は、転送データの容量を低減するために、データ構造に適したデータ圧縮/復元技術を開発した。特徴は、データの評価検討に重要な部位の情報のみを抽出し、それ以外の情報は、圧縮率の高いデータ圧縮を行うこと。重要部位の情報と、圧縮した情報を転送後に組み合わせて復元することで、重要部位の情報の精度を落とさずに、データ量を大幅に低減したデータ転送を実現。パワーエレクトロニクス製品の大規模流体解析結果データを用いた検証では、この圧縮技術の適用により、データ容量を1/10~1/100に低減できることを確認した。

 また、日立が有するネットワーク高速化技術を日本、米国、インドの各研究開発拠点に導入し、回線帯域を最大限に活用することで、データ転送の高速化を図った。回線帯域の大きい日本・米国拠点間では17倍、回線帯域の小さい日本・インド拠点間においても2.4倍の高速化効果が得られることを確認した。

 そしてこれらの技術を組み合わせて利用した結果、シミュレーション結果のデータ転送時間を1/100以下に低減でき、日本・米国拠点間では170倍、日本・インド拠点間では120倍の高速化効果が得られることを実証した。これにより、回線帯域が国内より一桁低いインドの拠点においても、国内と同等の時間で、日本のシミュレーション環境を使用できることを確認した。(編集担当:慶尾六郎)