増えぬ看護師 医療現場は救われるのか

2014年04月13日 21:31

 看護師不足が社会問題として叫ばれるようになってから、どれだけの年月が経ったであろうか。医療の現場では未だに人材不足に悩まされ、病院経営における大きな問題点となっているケースも珍しくない。一体なぜ看護師は不足しているのか。そして、看護師不足解消のためにどんな取り組みが行われているのだろうか。

 毎年、看護師国家試験では約45,000人から50,000人の合格者が生まれている。この数だけ見れば、看護師不足などすぐに解消できそうにも思えるが現実はそう甘くはない。その大きな原因として、看護師の離職率の高さがある。2010年の常勤看護師の離職率は11.2%。新卒の看護師も8.6%にのぼる。

 長時間労働や不規則な勤務形態、危険、汚いといった過酷な労働環境が看護師としての定着を阻み、慢性的な人員不足が更に労働環境を悪化させるといった負のスパイラルが起きているのである。また、出産や育児を行う間はどうしても職場を離れなければならないという女性比率の高さ故の問題点もある。男性であれば最も働き盛りである30代から40代にかけての期間にフルタイムで働くことのできない看護師が相当数いると考えられるのだ。

 そこで最近注目されているのが、潜在看護師の復職である。看護師の資格を持ちながら看護師としての職に就いていない潜在看護師の数は55万人から60万人いると推計されている。この中には条件さえ整えば、また復職したいと考えている看護師も少なからず存在するはずだ。現在、このような状況を踏まえ、各病院でも勤務形態に柔軟性を持たせ短時間労働を可能にしたり、研修やプリセプターと呼ばれる指導係をつけるなど、徐々にではあるが変化が起きつつある。しかしまだまだ潜在看護師の声を十分に拾いきれているとは言えず、特に看護師不足が深刻な地方の公的医療機関では改革が大幅に遅れているというのが現状だ。

 その他、今後は男性看護師を積極的に育成していく環境も必要だろう。多岐に渡る看護師の業務内容の内、全てが女性向きな物とは当然言えない。中には筋力を相当使う業務もある。これまで一人の看護師にトータルでまかせていた仕事を分担することによって、男性も看護師として働き易い職場となり、看護師不足の解消に役立つことになる。

 どれだけ医療が進歩してもその技術や知識を現場で支える看護師がいなくては病院自体が存在し得ない。医療の根底はやはり「人」なのだ。今後、病院や医療機関を全く利用しないと自信を持って言える人など皆無であろう。ましてや我が国は超高齢化社会を突き進んでいる真っ最中だ。看護師不足は決して業界内だけの問題ではないのである。(編集担当:久保田雄城)