前週末11日のNYダウは143ドル安。NASDAQは2月3日以来の4000割れで終えた。ウェルズ・ファーゴの決算は最高益を更新したが、JPモルガン・チェースは純利益が減益で市場予測を下回り、金融株はハイテク、バイオの「モメンタム銘柄」とともに下落。14日朝方の為替レートは、ドル円は101円台半ば、ユーロ円は140円台半ば。13日にウクライナの治安部隊が東部の都市で武装勢力の強制排除に出て死傷者が出てユーロは下落したが、ドルは比較的しっかりしていた。
11日のシカゴCME先物清算値は13900円。取引時間前の外資系証券の売買注文動向は6営業日連続の売り越し。ウクライナ情勢悪化だけでなく、熊本県の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザに感染したニワトリが発見され11.2万羽を殺処分するなどバッドニュースばかりで自律反発の頭が抑えられそうな日経平均は72.82円安の13887.23円で始まる。午前9時19分には11日のSQ値13892円を下回り13885円まで下落するがザラ場ベースの年初来安値更新はかろうじて回避。アメリカの株安に加えファーストリテイリング<9983>がこの日も軟調で日経平均を押し下げるが、TOPIXはたびたびプラスになった。日経平均も9時台一時プラスにタッチし、中国市場が上海も香港もマイナスで始まっても10時台後半はプラスを維持し14000円もたびたびタッチ。10時55分に14008円まで上昇した。しかし11時台はあえなく失速してマイナスに落ち、前引は13944円だった。
後場は午後2時頃までプラスとマイナスの間を頻繁に行ったり来たりする。2時台はプラス圏で14000円に接近するがなかなか突破できない。前場はプラスだったソフトバンク<9984>も下落し日経平均を押し下げる。モタモタしているうちに2時45分頃からマイナス圏に急落。大引け間際には日経平均先物、TOPIX先物にまとまった売りが入って下げ一方になり、終値は49.89円安の13910.16円で続落した。日中値幅は123円。TOPIXは-1.33の1132.76で7営業日続落した。自律反発で14000円にはタッチしてもそれが精いっぱいの1日で、売買高17億株、売買代金1兆6099億円と、薄商いは依然として続いている。
東証1部の値上がり銘柄は683、値下がり銘柄は944で52%に増えて終えた。33業種別騰落率は上昇10業種、下落23業種。プラス上位は鉱業、石油・石炭、輸送用機器、食料品、金属製品、水産・農林など。マイナス下位は海運、空運、ゴム製品、電気・ガス、証券、繊維などだった。
日経平均採用225種の値上がりは85銘柄、値下がりは130銘柄。プラス寄与度1位はダイキン<6367>で+3円、2位はトヨタ<7203>で+3円。マイナス寄与度1位はファーストリテイリングで-40円。前週の通期利益下方修正の悪影響が尾を引き、この日は英国の女性向け雑貨ブランドの「キャス・キットソン」を約420億円で買収する計画が英国メディアで報じられたが材料にならず1025円安で年初来安値を更新した。2位はソフトバンクで-14円だった。
メガバンクはみずほ<8411>は値動きなし、三菱UFJ<8306>は7円高、三井住友FG<8316>は5円高だったが、証券セクターは依然として悪く野村HD<8604>6円安、大和証券G<8601>8円安。薄商いが続くと売買手数料収入が入らなくなってくる。自動車はトヨタ、ホンダ<7267>、日産<7201>、三菱自動車<7211>の4社がEV、PHV用充電設備を共同で設置するニュースがあったが、それよりみずほ証券がつけたレーティングのほうが株価への影響は大。「中立」から「買い」に引き上げられたトヨタは96円高と買い戻されて反発し、同じく引き上げられた富士重工<7270>は70円高だったが、引き下げられた日産は8円安。日経新聞がゴーン体制について辛らつな内幕記事を掲載していた。ダイハツ<7262>もレーティングを引き下げられ3円安、ホンダは2円安、三菱自動車は5円安だった。電機は日立<6501>は3円高だったが東芝<6502>は2円安で、まちまち。
昭和電工<4004>はパワー半導体向け材料の生産を10倍にすると伝えられ1円高。EVでの需要増が見込めるという。工作機械のアマダ<6113>は金属加工機械が好調で今期の営業利益は前3月期の2倍という業績観測が出て12円高。小型自動旋盤のツガミ<6101>は3月期決算の営業利益見通しを3分の1、経常利益見通しをほぼ半減と下方修正したが、同時発表の自社株買いのほうを好感されて12円高だった。
海運セクターはUBSが日本郵船<9101>と商船三井<9104>の目標株価を引き下げ、日本郵船は9円安、商船三井は8円安、川崎汽船<9107>は4円安で大手3社全て年初来安値更新。アベノミクス相場上昇率ナンバーワン業種もこの日は業種別騰落率最下位に甘んじた。JR東海<9022>はリニア技術をアメリカにライセンス料ゼロで提供する話題がありほとんどの時間帯はプラスだったが終値は5円安。12日に安倍首相がケネディ駐日大使とリニア実験線に同乗して売り込み。日本政府がワシントンDC-ボルティモア間の建設資金1兆円の半分を国際協力銀行経由で融資する話もあり、まるで政府開発援助(ODA)。オバマ大統領は23日に来日する。
鳥インフルエンザの感染確認は3年ぶり。インフル関連の大幸薬品<4574>は50円高、ダイワボウHD<3107>は2円高、富士フイルムHD<4901>は23円高。〃風評被害〃を受けたのが宮崎県の自社養鶏場で地鶏を生産する居酒屋チェーンのエー・ピー・カンパニー<3175>で、被害が出た熊本県多良木町が宮崎県に接するため95円安で値下がり率7位。「ケンタッキー」の日本KFCHD<9873>は2円安だったが、吉野家HD<9861>は11日に発表した決算が「牛すき鍋膳」好調で営業利益16.1%増と良く、今期も営業利益51.4%増を見込んで3日続伸の54円高で値上がり率12位。外食需要は鶏肉から牛肉にシフトするのだろうか。
ニッケルの高騰が続き住友金属鉱山<5713>は20円高で3日続伸、大平洋金属<5541>は4円高で年初来高値を更新した。ニッケルは「天国に一番近い島」ニューカレドニアは環境問題で減産、インドネシアの主要産地のスラウェシ島(セレベス島)も掃除機型の象にでも吸い取られたのか減産で、インドネシアがボーキサイトとともに禁輸措置を実施していることもあり需給がタイトになりロンドンLMEのニッケル価格は10日連騰した。
この日の主役は、1年半前には「巨額最終赤字三兄弟」と並び称されたソニー<6758>、パナソニック<6752>、シャープ<6753>。シャープは売買高2位、売買代金7位と売買は急増したが26円安で年初来安値を更新し値下がり率2位に入った。2014年度中に2000億円規模の公募増資を検討という報道を受けて希薄化懸念で売られ、一時は下落幅が10%を超えてカラ売り規制がかかった。2013年度の公募増資1365億円よりも金額が大きいのも心証を悪くした。ソニーはパソコン「VAIO」の新型機種に発火の恐れがあると発表し、シティグループがレーティングを維持したものの6円安。もっとも、火を噴く危険性があるのはパナソニックが製造したリチウムイオン電池なので同社株は3円安と下落した。パナソニックは店頭で品薄になったので白物家電の増産を5月まで続けるという。本来なら夏を前にした今頃は売れるシーズンだが、消費増税の今年は特別なようだ。(編集担当:寺尾淳)