電動アシスト車いすをヤマハ発動機が発表

2014年04月17日 07:37

Yamaha_Wheelchair

ヤマハ発動機がすべて製作する完成車「電動アシスト車いす」の『JWスウィング』、これならば多少段差のある路面でも簡単に乗り越えられそうだ。

 厚生労働省によると、障がい者が日常生活を送る上で必要な移動等の確保や、就労場面における能率の向上を図ることを目的として、身体機能を補完・代替する用具として「補装具費を支給する」制度があるという。歩行が困難な障害者は、前者の制度を利用して障害に応じた手動車いすの製作費の給付を受けられる。

 一方、高齢者に対する介護保険の活用で、「福祉用具貸与サービス」というシステムがある。自立歩行が困難な高齢者に介護保険で車いすをレンタルするというシステムだ。

 今回、ヤマハ発動機(以下ヤマハ)が発表した「電動アシスト車いす」の『JWスウィング』は、後者の介護保険適用レンタル向けにフォーカスして開発した製品だ。

 基本的なメカニズムは、ヤマハが昨年モデルチェンジした「車いす用電動アシストユニット」である『JWX-2』と同じだ。が、JWX-2は障がい者が補装具費支給で作った手動車いすに後付けするタイプのユニットであるのに対し、新製品『JWスウィング』は、フレーム本体・シートなどもヤマハが製作した、「ヤマハの完成車電動アシスト車いす」と表現できる製品である。

 ヤマハの電動車いす事業の歴史は1995年に発売した「ジョイスティック操作型の車いす用電動ユニット」の『JW-1』から始まった。以後、福祉分野や高齢化社会などに対応し、高度制御技術や駆動方式を開発して電動車いすを提供してきた。前述した昨年発表の『JWX-2』はアシストの優れた制御が高く評価されているという。

 新しい完成車である『JWスウィング』の特徴は大きく4つと言える。

 まず、なかなかお洒落なデザインで、バッテリーを別体のケースに収納してシートバック背後にレイアウトし、電動アシスト車には見せないための工夫が効いている。

 また、電動車いすでありながら、普通の手動車いすのように簡単に折りたため、クルマのトランクに収納出来る。重量は電動アシストニットを後付けした車いす(28-30kg)に比べて5kgほど軽い23.9kgとなった。それでも、荷室に収納しにくい場合は、両側の車輪を簡単に取り外収納可能だ。

 加えて、『JWX-2』ゆずりのJW Smart TunePCソフトによる2種類のアシスト設定が可能なことだ。たとえば使い方などにより外出用アシストと室内移動アシストなど組み合わせは自由なのだ。

 そして、アームレスト、タイヤ、ハンドリム、バッテリーの選択肢が広く、ホイールキャップの色も多彩で楽しい。楽しいから「外出意欲が増す」、これが『JWスウィング』の特徴といえそうだ。

 個人的に筆者は数年前に3カ月ほど車いす生活を強いられた。そこで分かったのは、ブレーキがない車いすの操作でいちばん怖いのは「登坂よりも下り坂」だと思っている。この点にも『JWスウィング』の対処は怠りなく、下り坂で作動するエネルギー回生ブレーキによって回生ブレーキによって一定のスピード以上にはならない構造になっているという。

 6月10日から販売される『JWスウィング』の価格は36万3000円から(非課税)で、駆動用バッテリーは2種類、ニッケル水素電池(走行距離20km)と、リチウムイオン電池(走行距離40km)。