インターネットの普及の波は今や留まるところを知らない。これまでパソコンや携帯電話などの情報通信機器での利用が主流であったが、技術の進歩・発展により、世の中に存在する様々なモノに通信機能を持たせ、インターネットに接続して情報をやり取りしたり、相互に通信したりすることによって、自動制御や自動認識、遠隔計測や遠隔操作などを行う「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」が注目を集めている。そして、そのキーとなる技術が、Wi-FiやBluetoothなどで知られる近距離無線通信技術だ。
一般的には、スマートフォンなどでも使用されるWi-FiやBluetoothなどが有名だが、近距離無線通信には、ZigBeeやWi-SUN、EnOcean、NFCなど、様々な規格が存在している。その中でも、電源レス・配線レスによるメンテナンスフリーを特長とするEnOceanの普及が急速に進んでいる。EnOceanは、主にビル設備や産業設備用途に用いられてきたが、最近では介護や医療分野への応用や、国宝や重要文化財など寺社施設での導入も行われており、一般的な認知度も高まってきているのだ。
日本企業では、半導体のローム株式会社が早くからこの技術に着目して開発を行っており、2012年10月にはアジア企業として初めて「EnOcean Alliance」の主幹メンバーであるプロモーターに就任している。
そんなロームがこの度、札幌に本社を構える組込みプラットフォームの開発メーカー・株式会社アットマークテクノと共同で「EnOcean」を活用したIoTゲートウェイ向け開発キット「CS-A420W-ENOCEAN」を開発した。同キットはアットマークテクノ社の主力商品であるARMプロセッサ搭載・Linux対応の組み込みプラットフォーム「Armadillo(アルマジロ)」をベースにEnOceanの各種センサモジュールをセットしたもので、センサモジュールが検知した信号を「Armadillo」が処理し、無線LAN や有線LAN を通じてインターネットに送信することが可能だ。特筆すべきは、62,000円(税抜)で1個から購入が可能であることと、サポート体制も充実しているため、ユーザーは「EnOceanシステム」「IoTゲートウェイ」の実現と導入を容易に行うことが可能になり、アプリケーション開発に開発リソースを集中させることができる。
導入が容易になれば当然、対応する製品も増え、用途も拡がるだろう。メンテナンスフリーの環境発電技術であるEnOceanの普及により、いろいろセンサネットワーク構築が進むのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)