政府・電力・原発関連事業者は反省しているのか。疑問続きの状況だ。原発をベースロード電源にし、原発を永久存在エネルギー源にしてしまう可能性さえ高い。さらに、トルコ・UAE(アラブ首長国連合)への原発輸出を可能にする原子力協定承認などなど、経済優先の流れが加速している。
忘れてならないのは原発事故とのたたかいが続いており、環境汚染は収まっていないということ。東電福島第一原発事故の放射性物質による高濃度汚染水や大気中に今も放出され続ける1日2億4000万ベクレルの放射性物質。さらに人為的ミスと思われる予定外建屋への汚染水移送などなどきりがない。
東電の管理体制や事態に対する危機意識の持続の問題など、福島第一原発事故処理対応では「一つのミスも許されない」ことを改めて、日々、自覚頂かなければならない。
そして、廃炉まで、一義的には東電が、そして、国が前面に出て、廃炉までの40年を監督、支援していくことは「国際社会に対する責務」といえよう。
こうした中で、政府はエネルギー基本計画で原発を低廉で安定的に発電でき、昼夜問わず継続稼働できる「ベースロード電源」と位置付ける閣議決定を行った。
脱原発を世界に向け「宣言」するどころか、「規制基準に適合した原発は再稼働を進める」と原発再稼働を世界に宣言した。
連動して、使用済み核燃料から取り出した核物質(プルトニウム)を再利用する核燃料サイクルも「推進する」と表明した。
日本は再生可能エネルギーの開発・推進に傾注し、原発に代わるローコストで安定的なエネルギー供給に取り組むことを第一に挙げ、脱原発への呼びかけをこそ、エネルギー基本計画の中で世界に示すべきであったにもかかわらず、閣議決定はこれとは真逆だった。
そして、原発をベースロード電源と位置付ける中で、18日、原発輸出へ大きな一歩を踏み出した。参議院本会議でのトルコ・UAEへの輸出を可能にする原子力協定承認案可決・承認。自民だけならいざ知らず、民主・公明までが賛成した。
福島原発事故時の脱原発・原発のない社会への思いや決意はどこへ消えたのだろう。自民党は2012年の総選挙で「原子力に依存しなくてもよい経済・社会」を公約に、公明党は「可能な限り速やかに原発ゼロ」を公約に挙げ、選挙を戦った。その公約はどこかに消えた?
そして、「世界で最も厳しい基準」という新たな安全神話がいつの間にか妙な安心感を売る響きになってきてしまっている。「世界で最も厳しい基準」イコール「危険が全くない」ということでは全くないことを忘れてはならない。
原発をベースロード電源としたことに経済界は「歓迎」している。特に原子力産業界は大歓迎だ。日本原子力産業協会の服部拓也理事長は「民主党政権が展開した原子力ゼロ方針で広がった我が国に対する国際的な懸念を払しょくする力強いメッセージ」とした。
そのうえで「福島原発事故後も世界の多くの国々が原発導入を計画している。我が国にはより安全性を高めた原子力技術の提供など、原子力利用国として、その期待に応える責務がある」と原子力技術の輸出が日本の責務とまで断言した。
経済界を代表する米倉弘昌日本経団連会長は再生可能エネルギーについて「低コスト化等の研究開発に注力するとともに、導入目標については国民生活や経済活動に大きな負担を与えるような過大なものとならないよう慎重な検討を」と拙速な推進目標の設定をけん制した。
何とも、エネルギー基本計画や原子力協定の承認は経済界の意向を反映しており、経済最優先の安倍政権の姿勢を色濃く反映している。経済界は「原子力利用の市場性」に明るい展望を見出した。
原発に関してその技術力を高め、世界に貢献するというなら事故経験中の国として、廃炉に向けた脱原発技術の輸出こそ必要だろう。
共産党の志位和夫委員長はツイッターで「安倍政権のエネルギー基本計画に財界は大はしゃぎ。原子力産業協会理事は『福島第2原発を再稼働せよ』と述べた。どこまで反省のない人たちなのでしょう」とつぶやいた。
福島県民の前で「第2原発を再稼働せよ」と言えるのだろうか。原発産業界はこぞって廃炉のための技術開発と放射性汚染物の処理問題、あわせて全国の原発から排出される使用済核燃料・高濃度放射性廃棄物の最終処分場確保を業界の責任として傾注すべきではないか。負の資産を増幅させてはならない。(編集担当:森高龍二)