中小・新興携帯電話会社の参入によってスマートフォンの利用料金に新たな価格競争が起きるかもしれない。4月22日に開かれた総務省の検討会において、利用者囲い込みのためのSIMロックを解除するよう大手携帯会社へ要請する提言が行われたためだ。囲い込みの力が弱まり、新規参入する企業が増えれば当然料金の引き下げへと業界全体が動くことになる。
スマートフォンやタブレット型端末は、利用者を識別するためのSIMカードを挿入して初めて事業者の通信網に繋がることができる。現在、ドコモ<9437>やKDDI<9433>、ソフトバンク<9984>など大手が販売する端末には、自社が発行するSIMカードにしか反応しないようロックが掛けられている。別の事業者へ乗り換えるためには高価な端末を再度購入し直さなければならないため、結果的に利用者は特定の通信網に縛り付けられている状態だ。日本インターネットプロバイダー協会による「端末は利用者の所有物であり、SIMロックによる制限は権利の侵害だ」との批判も確かに的を射ていると言えよう。
世界的にも日本のSIMロックは特異な存在となっている。欧州では購入から一定期間後には自由にSIMロックを解除できる場合がほとんどであり、イギリスに至っては始めからロックの掛かっていない端末が一般的だ。アメリカでも昨年米連邦通信委員会(FCC)と携帯大手の間で、ロック解除に向けての合意が交わされている。日本もこのような流れにいつまでも逆らっていては業界そのものの発展が遅れてしまう。新しいサービスや技術開発のためにも新陳代謝が必要なのだ。
今後総務省はSIMロック解除を推進するために、法律面の整備や指針の見直しを行うという。実現されれば携帯電話事業者の勢力図が大きく描き変えられる可能性もある。メールアドレスの変更など、乗り換えのネックとなる点は残るかもしれないが、それもSNS系アプリの普及によって代替が効くようになってきた。利用者側のハードルはかなり下がったと考えられるだろう。端末の値段や性能についてはメーカー同士の勝負となり、通信料金やサービスについては携帯電話事業者同士の勝負となる、そんな当たり前の環境が整う日も近そうだ。(編集担当:久保田雄城)