東京・港区台場のサントリー・ホールディングス(HD)が、今年1月にアメリカの蒸留酒大手のビーム社を総額160億ドル(約1兆6500億円)で買収すると発表した。買収手続きは独占禁止法にからむ欧州連合(EU)の審査を待ち、6月までに完了する。
結果、サントリーのスピリッツ事業と合わせて売上規模は年間43億ドルを突破し、世界で第3位のスピリッツ供給メーカーとなる。つまり、サントリーのシングルモルトウイスキー「山崎」「白州」だけでなく「JIM BEAM」「Maker’s Mark」などのビーム社ブランドを含めた包括的な海外での販売促進に向け、スピリッツ部門におけるビーム社の販路を効果的に活用しなければならない、というレポートは以前伝えた。
そのサントリーによるビーム社買収後に、現在東京・台場にあるサントリー酒類事業を担当する「サントリー酒類会社の本社機能を米国に移す方向で検討している」ということを伝えてきたメディアがいくつかある。共同通信が4月19日10時54分に配信し、国内の河北新報や徳島新聞などの地方紙が一斉に報じた一件だ。
前述のようにサントリーの酒類事業の海外営業・販路構築は、現在サントリーHD子会社のサントリー酒類が担当している。が、ビーム社買収後は米国の「ビーム・サントリー」(買収後のビーム社を改称する仮称)に、そのヘッドクオーターを置くというのだ。ビーム社のマット・シャトックCEOが社長に就くと具体的な記述をしているメディアが多い。
全体的な論旨は、本社機能を米国に移転したうえで、酒類事業やサントリー食品インターナショナルなどグループ全体の経営戦略は東京のサントリーHDが統括する。その傘下のサントリー酒類部門が米国本社主導でグローバルに打って出るということのようだ。
また、3月20日の発表によると、サントリーHDは中国の飲料大手「中国ホイエン果汁集団」と飲料販売などで合弁会社を設立すると発表。ホイエンの販路を活用し、上海や北京に偏っていた飲料事業を中国全土に拡大する。合弁会社は両社が50%ずつ出資、年内の設立を目指す。サントリーはホイエン側にも出資した上で、サントリー現地子会社の製造部門をホイエンに譲渡する。ホイエンの昨年の売上高は約717億円。中国の飲料市場の規模は日本の5倍超で、毎年10%程度の成長が見込まれる。
このようなサントリーのグローバルな展開を見ていると、サントリー食品インターナショナルは日本で株式上場したが、米ビーム社は米国上場企業だったわけで、今後の酒類事業については「ビーム・サントリー(仮)」として米国での株式上場も確かに考えられなくはない。国際的にライバルと目される「業界ビッグ2」の英・ディジオや仏・ペルノリカールと酒類事業でグローバルに競うためには、米国に本社を置くことは理に適っているとも思えなくもない?
この件についてサントリー広報部からは「それは、一部報道機関の……」としてコメントは得られていない。(編集担当:吉田恒)