電子楽器のローランド<7944>は前日、MBO(経営陣による企業買収)と上場廃止を発表して286円高で年初来高値を更新し値上がり率1位。3Dプリンター関連銘柄のローランドDG<6789>は一時ストップ高の585円高で同2位。MBO対象ではないが、ローランドが保有する株の放出に伴い公開買付(TOB)を実施し、発行済株式数の22%の390万株を自社株買いし消却する予定と発表した。工作機械のアマダが2時に発表したのは市場予測を上回る今期営業利益72.6%増の決算、6円の増配、1400万株上限の自社株買い、1000万株の自社株消却という好材料のてんこ盛り。急伸し59円高で値上がり率13位に入った。東急<9005>も決算と同時に1700万株上限の自社株買いを発表し、マイナス圏から急発進して18円高で終えた。
不動産はこの日も三井不動産が76円高で売買代金7位、ケネディクス<4321>が18円高で同8位、住友不動産<8830>が59円高で同15位と盛んに買われた。ゲーム・コンテンツ関連は本決算で通期業績見通しを公表しない銘柄が大半だが、ミクシィ<2121>はそれを公表し、最終利益が60億円で市場予測の42億円を上回ってストップ高の1000円高。「モンスターストライク」の快進撃は今期いっぱい続くとみているようだ。
決算発表のシーズンももう終盤だが、この日も業績見通しが市場予測に届かず容赦なく売られる銘柄が続出した。値下がり率1位のクレディセゾンは290円安、同13位の太陽誘電<6976>は97円安でともに年初来安値更新。日産化学<4021>は82円安、30円安のシチズンHD<7762>は今期営業利益見通しの270億円を280億円に書き換えていたら株価はプラスで終えたかもしれない。
14日にMSCIが恒例の指数構成銘柄の入れ替えを発表した。「標準指数」の日本株は新規採用が3銘柄、除外が12銘柄で9銘柄減少し、30日大引け後に入れ替えを実施する。新規採用の光通信<9435>とジャパンディスプレイ<6740>は事前に有力候補に挙げられて織り込み済みだったのかそれぞれ170円安、10円安だったが、ノーマークでサプライズ採用だったのが名古屋鉄道<9048>で、21円高で年初来高値を更新し値上がり率16位に入った。除外12銘柄に特にサプライズはなく、売買高ランキングで昭和電工<4004>が7位、双日<2768>が15位、宇部興産<4208>が17位に入ったが、騰落は5勝7敗。むしろ除外候補に挙げられながら残留した銘柄が安心感で買われる傾向が出て、アドバンテスト<6857>、グリー<3632>、大同特殊鋼<5471>、カネカ<4118>などが株価を上げていた。
この日の主役は前日に決算を発表したソニー。3月期の売上高は14%増の7兆7672億円だが、営業利益は88%の大幅減で264億円。最終損益は2013年3月期の415億円の黒字から一転、1283億円の巨額の赤字を計上した。液晶テレビ事業は10年連続赤字で、パソコン事業撤退に伴うリストラ費用で特別損失がかさんだ。今期見通しは、売上高は0.4%増の7兆8000億円でほぼ横ばい、営業利益は約5.3倍の1400億円とV字回復で、最終損益は赤字幅を圧縮し500億円の赤字。液晶テレビは前期実績に250万台上積みする1600万台が目標で黒字化を目指す計画。最大の頼みの綱がスマホで、前期実績に1100万台上積みする5000万台が目標になる。
NY市場ではADRが6.46%下落し、東京市場は110円安で6.09%下落。売買高は10位、売買代金は3位だった。通期見通しの下方修正を繰り返したのである程度は織り込み済みだったが、想定為替レートがドル円103円、ユーロ円137円と高めなのも不安材料で、区切りをつけるかのように売られた。3月期の売上高営業利益率は0.34%で、コストの重圧で利益をほとんど出せなかった上に、あんなに資産を売却し、事業を手放しても1283億円の最終赤字が残り、それを今期で783億円分圧縮する計画。「斜陽族」と言ったら失礼かもしれないが、営業利益V字回復がかなわなかった時、売りに出せるような「桜の園」はどれほど残っているのだろうか?(編集担当:寺尾淳)