東芝が無農薬野菜事業に参入 無菌状態の閉鎖型植物工場でレタス、ベビーリーフなどを生産・販売

2014年05月16日 20:26

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東芝クリーンルームファーム横須賀」。均一な温度・湿度の環境を実現する空調機器、栽培状況を把握するための遠隔監視システムなどのノウハウを採用した。

 このところ無農薬野菜などのオーガニックが注目を集めている。特に東日本大震災以降は環境への意識の高まりもあって、注目度はさらに高まっている。無農薬野菜は直接口に入るものなので、生産者・消費者ともにこだわりを持っている人も多い。しかし、一般の商品と比べると価格が高く、注目されているほど普及しないのが現状だ。

 とはいっても、「らでぃっしゅぼーや」、「大地を守る会」、「オイシックス」などの大手を中心に無農薬野菜や食品などを宅配する業者の活動も活発になっている。今回、東芝<6502>が、無農薬の野菜生産を事業化する。同社は15日、ほぼ無菌状態の閉鎖型の植物工場において、長期保存できる無農薬の野菜生産を事業化すると発表した。

 具体的には、神奈川県横須賀市の同社所有建屋を活用し、レタス、ベビーリーフ、ホウレンソウ、ミズナなどを栽培する植物工場に転用する工事を15日から開始した。14年度上期中には出荷を開始し、無農薬野菜で年間3億円の売り上げを見込んでいるという。

 植物工場「東芝クリーンルームファーム横須賀」は、同社所有の遊休施設を活用した閉鎖型の工場で、植物育成向けに光の波長を最適化した蛍光灯、均一な温度・湿度の環境を実現する空調機器、栽培状況を把握するための遠隔監視システム、梱包材などを消毒する除菌システム、半導体事業で培った生産管理技術などのノウハウを採用した。

 出荷される野菜は菌の侵入を制限したクリーンルームで育成されることから、雑菌による傷みが少なく長期保存が可能。高い鮮度が長期的に求められるカット野菜やサラダ用をターゲットとし、スーパー、コンビニエンスストア、飲食業者などを中心に販路を拡大していく。

 また、育成環境を制御することで、ポリフェノールやビタミンCを豊富に含んだ機能野菜を市場ニーズに応じて提供する予定だ。さらに、14年度中には海外に新たに大規模な植物工場を建設するとともに、植物工場向け機器やシステムの販売を開始し、事業拡大を目指す。

 東芝クリーンルームファーム横須賀は、所在地は神奈川県横須賀市船越町1-201-1、延床面積は1969m2、栽培品目はリーフレタス、ベビーリーフ、ホウレンソウ、ミズナ、スプラウト。生産規模は300万株/年(レタス換算)。

 しかし、前述したようにオーガニック品は価格が高いのがネック。これは、生産に手間とコストがかかり、さらに物流量が少ないため、流通コストもかかるため。東芝の広報部では価格については「ノーコメント」としている。(編集担当:慶尾六郎)