米国で「大規模に行なわれた小さな詐欺」と言われるサプリメント表示疑惑。果たして、日本も同じ轍を踏むのか?

2014年05月17日 14:36

サプリ

サプリメントの科学的根拠さえあれば「機能・効用を記してもOK」とする規制緩和策がもたらす影響。20年先輩の米国では訴訟騒ぎにも……?

 タイトルの「大規模に行なわれた小さな詐欺」とは、現在米国で渦巻くサプリメント製造会社に対する一般消費者の抗議の総称だ。

 1994年に米国で決まった法律「DSHEA法」で、サプリメントを医薬品と食品の中間に位置づけ、ダイエタリーサプリメントは口に入るものを「医薬品」「サプリ」「食品」の3つに分類。法施行後、科学的根拠があれば健康への効果・効能を表記してもOKとなった画期的な法律制度だ。結果として、米国でダイエタリーサプリメント市場が一気に拡大した。

 日本国内でも、内閣府消費者委員会が2012年実施した調査では、一般消費者の約60%が何らかのサプリメントを使い、50歳代以上で服用率は急増、約30%がほぼ毎日利用していると報告。内閣府の報告では、2012年でサプリメント市場規模は1兆7000億円に達するとしている。しかし、現状で「サプリメントのパッケージや広告に、その“メリット”など「●●……に効く」などの効果・効能を訴求すると、薬事法違反だ。しかし、一方で消費者は、そのサプリがどういう症状に効くのかという十分な商品情報がほしい。

 この日本のサプリ市場にフォローの風が吹くかもしれないと、先般レポートを伝えた。安倍・自民党政権の成長戦略で決まった健康食品の表示規制緩和の動きだだ。米国の「DSHEA法」サプリメント制度を参考に消費者庁が昨年から検討にはいって2014年度にも解禁される方向で動いているという。

 日本でも米国と同じことが起きれば、市場は一気に拡大。経済効果も大きいと、政府が推進する方向で動き・業界や団体の期待も高まっている。

 しかしながら、米国では、そのダイエタリーサプリメントの「DSHEA法」を巡って「揺り戻し現象」が起きているというのだ。つまり、サプリメントの科学的根拠はサプリを製造する企業責任において行なわれているところに問題の発端があるようだ。米・連邦政府としても、公的機関が米国内のあらゆるサプリの科学検査を実施するなど財政的に無理なことであり、すべて販売する企業の責任とした。

 ところが、ここ数年、その科学的根拠に疑問を抱く米国消費者団体などが“抜き打ち”で独自に調査を始めたところ、「科学的な裏付けが無い製品がほとんど」だったというのだ。「実はマウス供与テストしかしていない」、また資本力の無いメーカーでは「10年以上前の医学生のレポートを盗用」などという、とんでもない例もあったという。

 そこで消費者団体などが、「20ドルの無意味なサプリを2000万人に販売した“大規模に行なわれた小さな詐欺”だ」と表現し、集団訴訟などにも発展しそうなのだ。

 現在、政府自民党が進めているサプリの規制緩和は、1994年の米国「DSHEA法」を規範としている。審査母体は消費者庁だというが、公的機関の科学的根拠が示されない“サプリの効用”だけで消費拡大が図れるのか? (編集担当:吉田恒)