5月18日、フランス伝統のル・マン、ブガッティサーキットでMotoGPフランスGP決勝が行われた。
今回用されるブガッティサーキットはル・マンのショートコースと呼ばれるもので、ストレートが短いのが特徴。コース全長は4,185mだが、最長のバックストレートは674mしかない。
また、コース幅も13mとやや狭いサーキットで、右コーナー9、左コーナー5というコーナーの数に左右差がある。典型的なストップ&ゴーサーキットと言われるこのコースは、抜きどころが少ないテクニカルなレイアウトになっており、ライディング技術が問われる。
今回のフランスGPは予選から波乱含みだった。
予選でトップタイムを出し、ポールポジションを獲得したのはこれまで同様にマルク・マルケス(レプソルホンダ)だったが、なんと2番グリッドをルーキーのポル・エスパルガロ(モンスターヤマハテック3)が、3番グリッドをアンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)が奪い、フロントローはこれまでとは違った顔ぶれになった。
バレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)はセカンドローのグリッド、ホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)は6番グリッドからスタート。M・マルケスのチームメート、D・ペドロサは9番グリッドからのスタートと大きく出遅れることとなった。
ル・マンでのMotoGP決勝は雨が多く、今回の決勝も天気が大きなネックになると見られていたが、予選・決勝は共に好天。気温23℃、路面温度42℃のドライコンディションで決勝を迎えた。
決勝スタート、ホールショットを決めたのは3番手スタートのA・ドビツィオーゾだったが、レース序盤は大混戦。スタートで2番手につけたステファン・ブラドル(LCRホンダMotoGP)やV・ロッシ、P・エスパルガロ、ブラッドリー・スミス(モビスターヤマハテック3)といった面々が激しい攻防を見せた。
ポールポジションのM・マルケスはスタート自体は悪くなかったものの、3コーナーで順位を落とし、さらにJ・ロレンソとの接触を回避して10位までポジションを下げた。
オープニングラップでM・マルケスが大きく順位を下げたことによって、先頭争いは3目以降、V・ロッシ、S・ブラドル、A・ドビツィオーゾの3人に絞られた。
この先頭争いを制して前に出たのはV・ロッシだった。V・ロッシは4周目にA・ドビツィオーゾを抜いて先頭に立つと安定した走りを見せ、じわじわ後方との差を広げた。
だが、このV・ロッシを追い詰めたのが、オープニングラップで脱落したかに見えたM・マルケスだった。
M・マルケスは10番手から猛烈な追い上げを見せ、7周目には5番手、10週目には3番手まで順位を上げた。さらに、11週目には2番手のP・エスパルガロを軽々とパスし、先頭を行くV・ロッシに急接近。
レース中盤の13週目に、コーナーでロッシがふくらんだ隙をつきトップを奪った。オープニングラップで大きく順位を下げたにも関わらず、レース中盤でその主導権を握ったM・マルケスは、V・ロッシとの差を広げて独走態勢に入り、圧倒的な速さを証明した。
また、この決勝レースで激戦となったのが3位、表彰台争いだった。
予選2番手スタートで好ポジションを維持したP・エスパルガロとレース中盤からじりじりと順位を上げてきたアルバロ・バウティスタ(GO&FANホンダグレシーニ)はじわじわと2番手のV・ロッシとの差を詰め、レース終盤には2・3番手争いが激化。特にP・エスパルガロとA・バウティスタの攻防は激しく、最終ラップまで表彰台争いが繰り広げられた。
最終的には 2位V・ロッシ、3位A・バウティスタ、4位P・エスパルガロという結果になったが、P・エスパルガロの4位という成績は自己最高リザルトであると共に、GPクラスのルーキーイヤーでは最高位。A・バウティスタも2012年以来の表彰台獲得となった。
ホールショットを決めたA・ドビツィオーゾはレース中盤からじわじわ順位を落とし、最終的には8位に終わった。
このフランスGPでいまいちパッとしなかったのが、5位のD・ペドロサと6位のJ・ロレンソ。D・ペドロサは5月6日に腕の手術を受けており、これが影響した可能性が高い。また6位のJ・ロレンソはプラクティスやフリー走行ではそこそこの調子を見せるものの、まだまだ復調とは言えないようだ。
スタート直後の波乱から、M・マルケスの牙城がついに崩れるかに思われたフランスGPだが、結果はM・マルケスが異次元の速さを見せつける形となった。
2014年シーズン、無敵の強さを誇り絶対王者となっているM・マルケス。今シーズンは誰が勝つのかではなく、M・マルケスの無傷の連勝がどこまで続くのか、あるいは誰がこの独走にストップをかけるのかに注目が集まっている。
次戦は6月1日、イタリアGP。マルケスの連勝は果たしてどこまで続くのか。
イタリアGPではここ2戦好調で、次戦が母国グランプリとなるV・ロッシの活躍や、P・エスパルガロなど新星・伏兵の出現に期待したい。(編集担当:熊谷けい)