5月4日、いよいよヨーロッパラウンドに突入したMotoGP。多くのチームが本拠地を置くヨーロッパでの連戦はまさに今シーズンの行く末を大きく左右する戦いになる。
そのヨーロッパラウンドの開幕戦、MotoGP第4戦の舞台となったのはスペイン・へレスサーキット。全体的に技術的な難易度が高いと言われるヨーロッパのサーキットだが、その中でもヘレスサーキットは特にテクニカルでタフなサーキットだ。全長は4,423m、左コーナー5、右コーナー8というこのサーキットの特徴は、11mというややタイトなコース幅と、607mのホームストレート。この短いホームストレートと狭いコース幅は他のサーキットに比べてオーバーテイクが難しくなる。
そのため、第4戦スペインGPの鍵を握るとされたのが「スタート」である。
また、今回の決勝レースで大きなポイントとなるのが路面温度だ。雲一つない、抜けるような青空の下で迎えたスペインGP決勝は気温28℃、路面温度49℃というコンディション。レース中に路面温度が50℃を超えるこのハードなコンディションではタイヤマネジメントが非常に重要になる。そのため、タイヤチョイスもチーム・ライダーによって大きく異なった。
決勝での注目はやはり予選でポールポジションを獲得したマルク・マルケス(レプソルホンダ)と2番グリッドのホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)、3番グリッドのダニ・ぺドロサ(レプソルホンダ)の1列目。
そして、今シーズンの予選最高位である2列目・4番グリッドを獲得したバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)だった。ホンダVSヤマハの構図が明確になってきた今シーズン、この予選のポジションは順当で予想通りとも言えた。
だが、スタート直後の1コーナーでホールショットを決めたのはアンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)だった。2列目6番グリッドからのスタートであったA・ドビツィオーゾは抜群のスタートで1コーナーに侵入した。
しかしその直後、M・マルケスがこれを抜き返しトップに躍り出る。またV・ロッシもマルケスにぴったりとつき、レース序盤はM・マルケスとV・ロッシが熾烈なトップ争いを繰り広げる形となり、それにJ・ロレンソ、D・ペドロサが続いた。
この熾烈な争いから抜け出したのはやはりM・マルケスだった。レース3周目から、M・マルケスは2番手のV・ロッシをじわじわと引き離しはじめ、レース5周目には独走態勢を築く。危なげない走りながら、速さを追及するM・マルケスにはもはや敵はなかった。
これに対してJ・ロレンソ、D・ペドロサの3番手争いは周回を重ねるごとに激化した。レース後半の21週目、レース序盤からJ・ロレンソにつけていたD・ペドロサが3番手に浮上し、1秒ほど差のついていた2番手のV・ロッシを猛追。最終ラップ、最終コーナーのぎりぎりまでV・ロッシを追い詰めたが、結局はM・マルケス、V・ロッシ、D・ペドロサの順で決着した。J・ロレンソはレース後半に2・3番手争いから脱落し、4位に終わった。
またこれ以降は、5位にA・ドビジオーゾ、6位に開幕戦から3戦連続リタイアを喫していたアルバロ・バウティスタ(GO&FANホンダグレシーニ)、7位にアレイシ・エスパロガロ(HGMフォワードレーシング)となっている。
第4戦目も蓋を開けてみればM・マルケスの圧勝だった。M・マルケスは開幕戦から無傷の4戦連続ポール・トゥ・ウィンという偉業を打ち立て、早くも向かうところ敵なしの状態だ。
だが、今レースは開幕戦からの3戦とは少し違った傾向が見られる。
それがフリー走行・ウォームアップ走行の結果だ。開幕戦カタールGP~第3戦アルゼンチンGPまでは、予選やフリー走行を通してM・マルケスが圧倒的な速さで一番時計を連発することが多かったが、スペインGPにおいてはそうとは言い切れなくなった。予選こそM・マルケスが2台のマシンを使用してポールポジションを獲得したものの、レース直前のウォームアップ走行ではJ・ロレンソが一番時計を出しており、またV・ロッシもこのウォームアップ走行でコンスタントに好タイムを刻み3番時計を記録している。
決勝でもV・ロッシが2位になったことを考えると、レプソルホンダの牙城をモビスターヤマハMotoGPが崩す可能性は大いにあると見ていい。
いまいち調子の上がらないJ・ロレンソだが、予選・フリー走行ではまずますのタイムを記録しているため、完全に復調すればホンダにとって、あるいはM・マルケスにとって大きな脅威になることは間違いないだろう。
次戦は5月18日、伝統のル・マン(ブガッティサーキット)で行われるフランスGP。昨年のように雨レースとなることが多いサーキットなだけに波乱の展開となる可能性もある。
M・マルケスの快進撃がいつまで続くのか、またこのル・マンでM・マルケスの連勝を止めるライダーが現れるのか、大きな動きがあることを期待して次戦を待ちたい。(編集担当:熊谷けい)