「敵の敵は味方」 外来種が別の外来種の勢力拡大を防ぐ 東大が発表

2014年05月20日 07:53

 生物の生息地のつながり、すなわち「生息地ネットワーク」は、希少種や生物多様性を保全するうえで重要視されてきた。しかし、外来生物が侵入した生態系では、生息地ネットワークが在来生物を減少させるという逆効果もあるのだ。ところが、この側面を実証した研究はこれまでほとんどなかったという。

 東京大学大学院農学生命科学研究科の宮下直教授らの研究グループは、岩手県一関市にある約150個のため池調査した。これにより、外来種のウシガエルがため池伝いに生息地を拡げ、在来種のツチガエルを減少させていることを明らかにした。

 ところが、ため池にユーラシア大陸由来の外来種であるコイが生息していると、ウシガエルの定着率や個体数が減り、結果的に在来種であるツチガエルの数がそれほど減らないことがわかったという。

 その理由は、ツチガエルのオタマジャクシは水草などの隠れ家を好む習性があるのに対し、ウシガエルにはその習性がないため、結果的にウシガエルがコイに食べられやすいためであると推測される。つまり、ツチガエルはコイによって、ウシガエルの被害というネットワークの悪影響から間接的に守られていたことになるのだ。

 複数の外来種が生息する生態系は、今やごくありふれている。そうした生態系では、外来種と在来種の間だけでなく、外来種同士も関係し合っている。こうした状況では、ある外来種を駆除しても、予期せぬ副作用が生じることがある。

 この成果によれば、水草を激減させることで知られているコイをため池から除去すれば、ウシガエルが増えてその生息範囲を拡げ、在来種のカエルや水生昆虫に大きな影響を及ぼす可能性がある。「生息地のネットワーク」と「生物同士の関係」を同時に考慮することが外来種の管理を実践するうえで重要であるとしている。

 筆者の家の近くにも川がある。ここには多くの亀が生息しているのだが、よくみかけるのは外来種であるミドリガメだ。川には「ミドリガメを捨てないでください!在来種が駆逐される恐れがあります」と書いてある立て看板がある。在来種、外来種ともに仲良くやれないものか。(編集担当:慶尾六郎)