モスとミスドが3度目のコラボ 消費者目線の食べる楽しさとは

2014年06月07日 12:04

 「フレンチクルーラー ぐるぐるチョリソ」「ライスバーガー あん&カスタード」、これらの商品をご存知だろうか。そう、モスバーガーとミスタードーナツのコラボ商品だ。この他にもお互いの商品を参考にした新メニューが5月28日から販売されている。

 モスバーガーを運営する株式会社モスフードサービス〈8153〉とミスタードーナツを経営するダスキン〈4665〉は、2008年に資本・業務提携を行い、商品コラボはこれで3度目となる。今回のテーマは「モスとミスドのとりかえっこ」。テレビCMをご覧になった方もいると思うが、宣伝面でも出演タレントを入れ替えるなどのコラボアピールを行っている。

 両社は10年から、両ブランドの複合店舗「MOSDO」の出店も開始した。さほど大きなインパクトを残しているわけではないが、安易な価格競争に陥りやすいファーストフード業界では、意味のあるブランドメンテナンスと言えるだろう。企業としても、お互いのマーケティング戦略や仕入れ・流通チャネルの共有という点で効果が高い。

 ファーストフードチェーン業界1位は日本マクドナルドホールディングス〈2702〉だ。しかしそのマクドナルドは近年業績悪化に苦しんでいる。その理由は、フランチャイズの増加や、スピードと価格の安さを追求するあまりサービスや労働環境が低下していることなどが考えられる。

 通常、業界のトップ以外の2社の提携は、トップへの対抗策として打ち出されることが多いが、モスバーガーとミスタードーナツの提携は少し毛色が違うように思える。「不振にあえぐマクドナルドをこの機会に打ち倒そう」という野心よりは、マクドナルドの問題点を見据えた上で「消費者に楽しんでもらおう」という姿勢の方が見て取れる。

 マクドナルドの不振の原因の1つは乱発される低価格商品や、13年に期間限定で行われた「60秒以内で提供出来なければ無料券配布」などに代表される過剰とも言えるサービスである。一見これは消費者に寄り添っているように見えるが、あくまで消費者を引き付けるための施策であり、消費者に楽しんでもらうための施策ではない。

 一方でモスバーガーとミスタードーナツがMOSDO出店や、今回のコラボ商品で行っている事業は、消費者に選ぶ楽しさや組み合わせの楽しさを提供している。価格競争ではなく、商品の種類やオリジナリティでブランドを築いてきた両社だからこそ、そうした消費者の楽しさに根差した戦略がとれるのではないだろうか。

 ちなみに冒頭で紹介した「フレンチクルーラー ぐるぐるチョリソ」は、「あの甘いフレンチクルーラーでおかずをはさむの?」と思って食べてみると、ミスドのフレンチクルーラーと違って甘さ控えめ、新たな発見がある商品だ。こうした食べる楽しみの提供こそ、本来の消費者目線ではないだろうか。少しずつだが着実に浸透してきた両社のコラボに今後も期待したい。(編集担当:久保田雄城)