顧客が、価格以上に求めるカスタマーサービス

2014年03月23日 17:42

 日本アバイア株式会社が2013年に日本を含むアジアパシフィック7カ国の一般消費者を対象に行った「コンタクトセンターにおける顧客体験調査」によると、消費者の約56パーセントが、一貫して優れた顧客サービスを提供する企業に少なくとも10パーセント高いコストをかけてもよいと考えているという興味深い結果が出ている。逆に、質の悪いサービスを提供された場合、家族や友人にその企業を利用しないよう積極的に勧めるという回答が7割、さらにそのようなサービスを提供する企業の製品やサービスの購入を積極的に避けるという回答は8割にものぼった。この結果からも明らかなように、日本に限らず世界の国々でも製品至上のビジネスモデルは終焉に向かいつつあり、消費者目線の優れたカスタマーサービスを提供していくことは、あらゆる企業の急務となっている。

 例えば、顧客への対応の速さが求められる損保業界では、株式会社損害保険ジャパン<8755>が2009年から、自動車保険分野の事故受付処理にアイルランドに登記上の本拠を置く総合コンサルティング会社アクセンチュアが展開する保険金請求処理ソリューションソフト「アクセンチュア・クレーム・コンポーネント・ソリューション」を導入し、初期事故受付に対する柔軟で応答性の高い対応を行っている。また小売業界でも、青山商事<8219>が運営する紳士服店チェーン「洋服の青山」では、体形情報を登録した会員カード番号を入力するだけで、店舗とネット通販サイトで身長などの顧客情報を共有できる「マイサイズ」サービスを展開している。ネット通販でも、サイズに合った商品で在庫のあるものだけが表示されるので、余計な商品を見なくて済む。その為、商品選びから購入までの時間が大幅に短縮できるとあって、顧客にも好評を得ているという。

 さらに、ヤマハ発動機<7272>でも、今年1月、二輪車事業のサービス部門と部品部門を約35年ぶりに一体化してCS本部を設置するという大幅な組織変更を行い、アフターセールス、アフターサポート、アフターサービスに関わる一切の業務を一つの窓口に統一した。これまで独立していた製品保証、二輪車サービス、部品、そして安全推進機能を「お客さま第一」というキーワードで括って組織の連携を促し、世界中の顧客の期待を超える品質やサービスを提供するのが狙いだ。

 前述の調査結果によると、顧客が製品やサービスを乗り換える理由の1位は「質の悪い製品/サービス」で72パーセント、2位が「わかりづらい顧客サービス」の66パーセントとなっている。3位に「値上げ」は入っているものの、意外にも45パーセントと半数以下の数字を示しており、顧客を固定化するためには価格よりもカスタマーエクスペリエンスが重要であることがよく分かる。例えば、携帯会社のサービスなどは料金体系が多岐に渡りすぎて、わかりづらい。また、他の小売業界でも、簡単な問い合わせをするだけでも電話を何箇所もたらいまわしにされた挙句、その都度、問い合わせ内容を繰り返さなくてはいけないようなことも珍しくない。ヤマハ発動機のように窓口が一つで、洋服の青山のように情報が共有されており、損害保険ジャパンのように迅速な対応をしてくれるならば、確かに他よりも10パーセントくらい高い金額でも、それ以上の価値があるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)