10~12日にアメリカのロサンゼルスでゲーム見本市「E3」が開催される。11日はオーストリアのウィーンでOPEC(石油輸出国機構)定例総会が開かれる。12日はニュージーランド、韓国、インドネシアで政策金利が発表される。サッカーW杯ブラジル大会が開幕し、決勝戦は7月13日。日本代表の初戦は14日(現地時間)。今週はアメリカの主要企業の決算はない。
つい数週間前まで、地上の迷宮をみじめにさまよっていた日経平均は、今や「孤高の鳥」と化して悠然と大空を駆けめぐっている。6日の終値15077円から見下ろすと、日足一目均衡表の「雲」(14480~14598円)も、200日移動平均線(14687円)も、何度も上昇をはね返した「鉄の壁」だった75日移動平均線(14579円)も、25日移動平均線(14482円)も、全て390~597円も下にある。
前週は3日以降、15000円手前で下げ止まり、割り込んでもすぐに元に戻った。終値は小幅高、小幅安が続いても高値圏水準で日数が経過していった。それにつれて移動平均乖離率、ボリンジャーバンド、騰落レシオ、ストキャスティクス、RSI(相対力指数)のようなテクニカル指標は日々「買われ過ぎ」の度合いを減らしていった。最初は「話がうますぎる」と思えた異常な上放れも、その水準が日々続けばだんだん日常化していく。それが「トレンド転換」というものなのだろう。
もちろん「孤高の鳥」には、飛んでいる周辺高度にサポートしてくれる味方がいない。390円とか498円も下落しないと200日や75日の移動平均線がサポートラインになってくれないし、500円近く下落しないと日足一目均衡表の雲は助けてくれない。そんなリスクを覚悟しながら高く飛んでいるから、今の日経平均は「孤高」なのである。
だが、孤高の鳥の後ろからは追い風、下からは上昇気流が吹いてきた。追い風とは、NYダウもS&P500も史上最高値を何度も何度も更新するアメリカの株高だ。6日に発表された5月の雇用統計も好調を維持した。非農業部門雇用者数の増加は4月の28.8万人が出来すぎで20万人を超えればポジティブなサインと言われていたが、21.7万人で市場予測の21.8万人とほぼ同じだった。失業率は4月と同じ6.3%で、市場予測の6.4%よりも良かった。これでもし、今週のアメリカの株価が「経済指標は良いが上がりすぎ。大きく下落する」と言う人がいたら、それはスラックスがずり落ちるのを恐れてベルトを締めた上からサスペンダーで吊すような超悲観論者だろう。今週のNYダウは前週同様、日替わりで利益確定売りによる下落と、上昇しての史上最高値更新を繰り返すと思われる。
そして、下から吹いて孤高の鳥を浮かせてくれる上昇気流が国内要因の「需給の改善」である。5日に東証が発表した「投資部門別・株式売買状況」(二市場)によると、5月26~30日の売買代金は「海外投資家」が2週連続の119億円の売り越しで前週の79億円より売越額が増えたが、それを補ってお釣りがきたのが「信託銀行」の買越額で、5月19~23日の1781億円から約4割増の2499億円で5週連続の買い越し。5月12~16日の買越額568億円と比べると実に4.4倍という急増ぶりだった。信託銀行名義の売買は年金資金や投資信託の運用受託が大部分。先物主体の「ヒット・エンド・ラン」戦法の投機筋とは対照的に、現物に比較的長期の資金が入ってきている。その背景にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革への動きがあるといわれている。それならば売買代金全体に占める裁定買い残の比率が小さくなり、需給が全体的に改善することになる。