昨年、国交省発表の「プレジャーボートの適正管理……」と題するレポートによると、日本に於けるプレジャーボートの市場は、高度成長期にあたる1960年代半から急速に拡大した。国民のマリンレジャーに対する関心も多様化し、業界においても市場拡大のための活動を活性化させた。その後、プレジャーボートの需要は一定の水準で推移。1980年代後期のバブル期にその絶頂を迎えた。しかし、そのバブル経済崩壊後にその需要は頭打ちとなり、1997年以降、急激な減少に転じた。
モーターボートの国内出荷艇数は、ピーク時の約1万5000艇(1990年)から約 3000艇(2008年)と20%程度に減少している。また、プレジャーボートの保有隻数においても約34万艇(1999年)をピークに約23万艇(2009年)まで減少したという。
そこでヤマハ発動機は、健全なマリンスポーツの普及を目的に、「手軽に」「安価に」「どこでも」レンタルして楽しむ事ができるレンタルボートクラブ、ヤマハ・マリンクラブ「Sea-Style(シースタイル)」を2006年にスタートさせた。このクラブは会員制のレンタルボート・クラブで、入会金 2万1600円、月会費3240円と毎回の利用料+燃料代だけでボート遊びが楽しめるシェアリングシステムだ。
このクラブの最もユニークな特徴の一つはレンタルが可能なホーム・マリーナが北海道から南は沖縄・石垣島まで、全国約140カ所(2013年11月1日現在)あることで、旅先で、そのエリア・海域の楽しさを満喫することが出来る。さらに昨年12月からハワイ・オアフ島にもホーム・マリーナが加わった。
レンタルボートは「クルージング向き」「フィッシング向き」「トーイング向き」「スポーツボート」「マリンジェット」など目的にあわせて利用できるように20種類をラインアップしている。また、すべての艇は3年毎に入れ替え、最新モデルが常に用意されている。全艇がGPSを装備し、万全なメンテナンスで、いつでも安心・快適にクラブ艇を利用できる。現在、全国で20種300艇から選択可能で、すべてのボートが艇体保険・賠償責任保険・搭乗者傷害保険・捜索救助費用保険に加入。現在、会員は、全国で1万6600名(2013年11月1日現在)だという。
今回行なわれた、この「Sea-Style」の説明会は、5月だというのに季節外れの真夏日だった。そこで、実際に東京湾&周辺運河クルーズを体験した。波の少ない運河航行はゆったりとして快適だ。が、東京湾のオープンな海域に出ると、操縦するヤマハのキャプテンが「スピードを上げます」といってスロットルを開ける。「だいたい50km/hほどのスピード(最高速度域)」というが、体感速度はそれ以上。潮風を受けて70-80km/hほどに感じる速度で疾走すると、真夏日の暑さを忘れる爽快なクルージングに変わる。また、水面から見る陸上の景色は見慣れた風景からまったく異なって見える。東京は河川、運河、海のどのエリアでも見所が多く、まったく飽きることがない。又、江戸城の城壁が残っていたり、現代と過去が交差する歴史についても興味が尽きない。
クルージングや釣りといった遊びが思い浮かぶマリンレジャーではあるが、昨今ブームの「工場萌え」ではないが、ビルや鉄道、高速道路といった構造物を下から眺める「楽しみ」や水路の充実していた江戸時代の歴史を「楽しむ」ことが注目が集まり、遊覧船のコースに取り入れられているようだ。どうも「Sea-Style」の狙いは、自分らしい遊び方を発見して、楽しむ人々を増やすことにあるようだ。
また、「Sea-Style」会員はおおむね4名以上でボートをレンタルするという。そこで同乗し、あの爽快感と観た事がない景色を味わった非会員が同クラブに興味を持つ……。そのあたりの戦略も周到とみた。あの異次元感覚を伝播させるのが、このクラブの目的の一つではないだろうか?と思う(笑)。何より、筆者自身が魅力に取り込まれているのがその証拠である。
「Sea-Style」のボートを操船するには、小型船舶操縦士免許が必要だ。この免許取得にもヤマハは、さまざまなシステムを用意している。(編集担当:吉田恒)