半導体市場における世界的な統計機関「世界半導体市場統計(WSTS)」は6月3日、2014年から16年までの3年間の半導体の製品別・地域別の予測をまとめた「2014年春季半導体市場予測」を発表した。2014年度の市場成長率は前年比6.5%増となる約3254億米ドル(約33兆4511億円)と予測している。市場を牽引するスマートフォン市場には第4世代品が投入され、依然として好調なことに加え、車載用途や産業用途の半導体需要も前年に引き続き堅調に推移する見通しも立っており、さらには欧州のGDPがプラス成長となっていることなども大幅なプラス予測の背景として挙げられる。伸長率が5%を超えるのは2010年以来、実に4年ぶり。13年秋に予測した4.1%をさらに2.4ポイントも上方に修正した予測となっていることからも、半導体市場の好調ぶりが窺える。
そんな中、半導体産業新聞(産業タイムズ社)が主催する「第20回 半導体・オブ・ザ・イヤー2014」の発表が、6月4日、東京ビッグサイトにて行われた。同賞は2013年4月~2014年3月の間に新製品(バージョンアップ等を含む)として発表された製品・技術、および半導体産業新聞紙上で紹介された新製品を対象に、同紙記者の推薦、自由応募を含めて候補製品・技術を選出し、厳正なる記者投票の上で選定された。部門は、半導体デバイス部門、半導体製造装置部門、半導体用電子材料部門の3つで、いずれも、開発の斬新性、量産体制の構築、社会に与えたインパクト、将来性などが選定基準となっている。
まず、半導体デバイス部門でグランプリに輝いたのは、オムロン株式会社の「高低差50cm(分解能5mm)を検知できる絶対圧センサ」。優秀賞には、ローム株式会社の「MOSFETとIGBTの良特性を兼ね備えた新型トランジスタ「Hybrid MOS」」と、ザイリンクス株式会社の「業界初の20nmプロセスで製造したAll Programmable UltraScaleデバイス」が受賞した。
また、半導体製造装置部門では、東京エレクトロン株式会社の「枚葉洗浄装置「CELLESTA™-i MD」」、半導体用電子材料部門では、昭和電工株式会社の「パワー半導体用SiCエピウェハー6インチ品」がグランプリに輝いている。
面白いのは、スマートフォンなどのモバイル製品が半導体市場を牽引する中、必ずしもその関係の製品ばかりが選出されているわけではないという点だ。たとえば、ローム社の「HybridMOS(ハイブリッド モス)」は、エアコンなど省エネ家電機器の他、産業機器の大幅な省エネ化に貢献する高耐圧新型トランジスタで、省エネ性能だけでなく、同社の技術の融合と独創性を高く評価されての受賞となった。
もちろんロームも、スマートフォン向けデバイスなどの優秀な製品を数多く開発し、積極的に展開している。しかしながら、それらを抑えて、今回の製品が高評価を得るところに、同社だけでなく、日本の半導体企業全体の底の厚さが垣間見え、頼もしく思える。(編集担当:藤原伊織)