【日経平均】内戦状態のイラクの地政学的リスクで164円安

2014年06月16日 20:16

 前週末13日のNYダウは41ドル高、NASDAQ総合指数は13ポイント高。ミシガン大学消費者態度指数速報値は市場予測を下回ったが、オバマ大統領が緊急記者会見で「地上軍投入はない」と表明し、原油先物価格の上昇が一服してイラク情勢を懸念した売りが後退。インテルの業績見通し上方修正、M&Aなどを材料に買い直された。インテルは6.83%、アプライド・マテリアルズは2.9%、プライスラインGから買収提案を受けたレストラン予約サイトのオープンテーブルは48.3%それぞれ上昇した。ECBの利下げでイングランド銀行の早期利下げ観測が浮上したが、アメリカ長期金利はわずかに上昇。16日朝方の為替レートはドル円が102円近辺、ユーロ円が138円近辺で、前週末と比べて少し円安に振れていた。

 安倍首相は13日の記者会見で35.64%の法人実効税率(東京都)を数年以内に20%台に引き下げることを表明。14日付の日経新聞では「成長戦略4大改革」として「法人税引き下げ」「労働時間規制の緩和」「混合診療の拡大」「農業の活性化」を挙げていた。外資を誘致するため国家戦略特区で窓口を官民で一元化する話も出ていた。

 内戦状態のイラクの情勢に特に変化はなく、NYの金先物、原油先物は続伸したが急騰とは言えない。戦時は急騰するバルチック海運指数も3日続落。13日のシカゴCME先物清算値は15050円。日曜午前のW杯初戦で日本が負け「国民の気分」悪化の影響が心配された日経平均は48.23円安の15049.61円で始まる。TOPIXも反落スタート。午前9時台、10時台前半は下落しても大台を割ることはなかったが、10時29分についに割り込み、10時54分に14980円まで下げる。それでも11時台は15000円台に戻ってその水準をキープし、前引は15003円だった。

 しかし後場は大台を割ってズルズル下げ、午後0時台のうちに14929円まで下落する。原因は急速な為替の円安。ドル軟調の要因はイラク情勢で、イスラム過激派がツイッターに投稿した「1700人処刑写真」が世界に衝撃を与えた。W杯よりも人殺しのほうが楽しいのか? 1時台はしばらく14940円台で踏ん張るが、1時40分頃から先物主導で再び下落が始まり、14900円も割り込んで1時59分に14867円の安値をつける。2時台は徐々に値を切り上げて14900円台を回復し、終値は164.55円安の14933.29円。前週から一進一退が続く。日中値幅は189円と大きい。TOPIXは-9.29の1234.68。売買高は18億株、売買代金は1兆6370億円だった。

 東証1部の値上がり銘柄は518、値下がり銘柄は全体の63%の1147。33業種別騰落率の上昇は1業種、下落は32業種。プラスは鉄鋼のみ。下落幅が小さい業種は精密機器、空運、卸売、石油・石炭、その他製品など。下落幅が大きい業種は不動産、ゴム製品、鉱業、倉庫、パルプ・紙、繊維などだった。

 日経平均225種の値上がりは27銘柄、値下がりは190銘柄。プラス寄与度1位は東京エレクトロン<8035>で+6円、2位は京セラ<6971>で+2円。13日とは正反対に「日経平均寄与度四天王」がマイナス寄与度1~4位に揃い踏みし、寄与度の合計は-68円で値下がり幅の約4割を占め、13日と同様に先物主導で動いた1日だった。

 みずほ<8411>1円安、三菱UFJ<8306>4円安、三井住友FG<8316>57円安とノンバンクは低調。野村HD<8604>も2円安で証券セクターも不振だった。三井住友トラストHD<8309>は、傘下の三井住友信託が日本郵政と決済サービスで提携したが値動きなし。売買高、売買代金とも2位のアイフル<8515>は13円高と独歩高した。

 外国人持株比率が過去最高になったトヨタ<7203>は31円安。ホンダ<7267>は45円安、マツダ<7261>は6円安。インドからイラクは遠いが、日本に比べれば近いのでスズキ<7269>は46円安。インドから中東・アフリカへの輸出拡大を図っている。タイヤのブリヂストン<5108>はIOCとの間で「TOPスポンサー契約」を締結したが58円安。16年リオ、18年平昌、20年東京、22年、24年の5大会分。日本企業では他にパナソニック<6752>が締結している。ライトの小糸製作所<7276>は野村證券がレーティングを引き下げて65円安だった。

 ソニー<6758>は3円高だったが、東芝<6502>は3円安、NEC<6701>は6円安、シャープ<6753>は売買高10位ながら4円安と電機大手は不振。しかし半導体関連はインテルの株価が13日に6.83%と大幅に上昇したため買われ、東京エレクトロンは172円高で年初来高値を更新し、アドバンテスト<6857>は7円高、SUMCO<3436>は6円高、信越化学<4063>は11円高。京セラも31円高だった。

 三菱重工<7011>はフランスのアルストム社に10%の出資を提案し買収の最終調整に入っていると伝えられたが24円安。売買高6位、売買代金10位。買収で手を組む日立<6501>は鉄道車両事業のM&Aに意欲的と伝えられたが値動きなし。アルストムはTGV車両を納入し、韓国のKTX車両などを海外に輸出している。