日本郵船も出資 新たな自動車産業の集積地となるメキシコ

2014年06月21日 17:54

 今月、日本郵船<9101>はメキシコの完成車物流会社CSI(Consorcio de Servicios Internacionales)グループと資本提携をしたと発表した。提携は日本郵船がCSIグループの株式の30%を取得する形で行われた。出資額は未公表だ。今回日本郵船が提携相手に選んだCSIグループは内陸輸送に強みを持ち、日本郵船のグローバルに展開する海上輸送との連携で、総合的な輸送サービスを自動車メーカーに提供することを目指している。

 今、メキシコは新たな自動車生産の拠点の一つとなりつつある。2011年のデータでは自動車生産台数で世界第8位、さらに輸出量ではフランス、ドイツ、日本、韓国という名だたる自動車メーカーを国内に持つ各国に続き世界第5位につけている(13年 在メキシコ日本大使館調べ)。生産台数は世界でも最高レベルの成長率を誇り、これからさらに伸びることが期待されている。

 成長するメキシコに、自動車メーカーの熱い目が向けられている。日系企業に先んじて欧米系自動車メーカーが大規模な投資を行っており、08年4月にフォードが30億ドルの投資を行ったことを皮切りに、フォルクスワーゲン、クライスラー、GM、アウディといった世界でも有数の自動車メーカーがこぞってメキシコに投資を行っている。欧米系メーカーに遅れをとりつつも日系企業の進出も相次いでおり、11年にはマツダ<7261>、ホンダ<7267>が、12年には日産<7201>とトヨタ<7203>が生産投資を発表し、メキシコに製造拠点を置いている。

 なぜ、メキシコが自動車産業の拠点として成長をしているのだろうか。

 メキシコの強みは、その地理的な優位さである。北に目を向ければ世界第2位の自動車市場であるアメリカがあり、メキシコは同国とNAFTA(北米自由貿易協定)により市場統合している。南に目を向ければ大きな成長を見せる中南米の自動車市場が控えており、こちらもすでにアジア市場に匹敵する規模となっている。メキシコは南北両方に魅力的な市場をもつ恵まれた位置にある。

 日本郵船の今回のメキシコへの投資は、同国から南北の市場への海上輸送のニーズに応えるためのものだ。自動車産業は08年の金融危機以降、消費地に近い地域で生産を行う「地産地消」モデルへと転換をはじめており、相次ぐ自動車メーカーの進出はそれを加速させている。日本郵船の今回の投資は、進出時に遅れを取った日系企業にとっても朗報だ。世界的な自動車の「地産地消モデル」の中で、日本の自動車産業が力を発揮することを期待したい。(編集担当:久保田雄城)