菊池武夫、日本のファッションデザイナー。ブランド名は「TAKEO KIKUCHI」、そのブランド設立は1984年で、今年の秋に30周年を迎える。日本のデザイナーブランド、しかも紳士服だけで、これほど長きにわたってファッションシーンを牽引し続け、確固たるポジションを確立している人を私は知らない。1939年生まれ、今年75歳を迎え、同ブランドのクリエイティブディレクターとして、さらに情熱を昇華させて独自のスタイルを描く。
今秋、「TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ)」は、ブランドデビュー30周年を機に、2014-2015年秋冬コレクションから30周年記念ロゴマークを使い「上質化・大人化」をキーワードに商品展開、広告宣伝、店舗でのイベントなどを行なっていくという。
重視する戦略的なポイントはターゲット層の大人化だ。これまで主要顧客としてきた団塊ジュニアの成長を受けて引き上げ、40歳代の大人な男たちをメインターゲットに据える。上質化という側面ではマーケットニーズに応え、スーツやジャケット、コートなどに上質なインポート素材を使い、体型変化に対応してサイズも拡充する。ソフトスポーツウェア全般も大人の男を想定したシルエットで対応するという。
9月から30周年を記念したコラボレーションアイテムが店舗展開するのも大きなニュースだ。「TAKEO KIKUCHI」と親交のあるブランドや個人と組んで、2カ月単位でテーマを掲げてコラボアイテムを発表していく試みである。
テーマは3つ。まず、9月からスタートする「TAILORED(テイラード)」で、英国のファッションブランド「ハーディー・エイミス」が得意とするチェスターフィールド・コートを「TAKEO KIKUCHI」のフィルターを通して製作する。テイラードにこだわり、銀座にテイラーサロン「THE CRAFTIVISM taishi nobukuni」を構えるデザイナー・信國太志と共に手がける、セットアップ(ジャケット+トラウザース)を展開する。また、30年前、ブランド発足当時の復刻ホワイトシャツも興味あるアイテム。ロングポイントカラーやダブルカフスなど当時のディーテールを活かしながらシルエットを進化させているという。織りネームも当時を再現し、30年前と同じ国内のメーカーで仕立てる。このシャツは個人的にも是非手に入れたいアイテムだ。
「BRITISH」は11月・12月のテーマ。英国モンゴメリー社のダッフルコートや「TAKEO KIKUCHI」オリジナルポーチに入れたロンドン老舗薬局「D.R.HARRIS」社のグルーミングセット。菊池武夫と親交の深い布袋寅泰とコラボしたジャケット、タイ、ポケットチーフ、マフラーなどが展開される。
1月・2月には「Made in Japan」を掲げ、1975年からジャパンメイドの眼鏡フレームを制作する白山眼鏡店と組んで、菊池武夫が愛用するフレーム「ラウンドクラシック」を別注生産で展開する。グローバルで人気の“PUMA Active”の代表モデルで海外生産だけだった「コースター」を「TAKEO KIKUCHI」が日本生産で別注し、商品展開する。
2014秋冬コレクションには、この10年ほど市場から消えていた、クラシックで大人な素材が幾つも採用されていた。モノクロームのグレンチェックやハウンドトゥース(千鳥格子)、ヘリンボーン(杉綾)などのツイード系のジャケット&トラウザース、コートは大人が安心して着用できる品格のあるアイテムに思える。
菊池武夫、自らの名を冠したブランド「TAKEO KIKUCHI」クリエイティブディレクターとして磨きがかかる。(編集担当:吉田恒)