混合診療の壁に風穴は開くか? 政府が「患者申出療養(仮)」を創設

2014年06月24日 12:07

 厚生労働省や関係団体の強い反対によって長年我が国ではタブーとされてきた混合診療が拡大への第一歩を切った。混合診療の拡大は新たに「患者申出療養(仮称)」と名称を変えて、未承認薬や先進医療を患者が利用するための道を開く。改めて混合診療についてふり返り、政府が新設を目指す「患者申出療養」について考えた。

 現在我が国が取っている健康保険制度の下では、病気になって治療を受けた際に、患者本人が支払う医療費は最大で3割負担。つまり、仮に1万円分の治療を受けても窓口で患者が支払う金額は3000円で済むわけだ。さらに75歳以上の高齢者については別途、自己負担の仕組みが設けてあり、原則として1割負担で済む。

 上記の負担額は、健康保険を使った「保険診療」を受けた場合の医療費だ。通常の体調不良やけがなどは基本的にこの「保険診療」内での診療がほとんどであるため、自分の治療が「保険診療」かそうでないかを意識する人は少ないかもしれない。

 一方この「保険診療」に当たらない診療は「保険外診療(自由診療)」と呼ばれる。具体的には健康診断や予防接種、美容医療、歯科の歯列矯正・インプラント、未承認薬の使用や先進医療などだ。

 両者の最大の相違点は「価格」。

 保険診療は、同一の医療行為に対して、国が全国一律の金額が設定しているもの。注射をしたら何円、薬を出したら何円、手術をしたら何円という具合だ。同じ医療行為なら、全国どの病院で治療を受けても原則として同じ金額になる。

 これに対して自由診療とは、実際に治療を行う医師が自由に価格を設定できるというもの。美容クリニックの医師などがリッチなイメージがあるのは、この価格設定を自由にできる自由診療を最大限に生かしているからだ。国が決めた治療費の縛りがある保険診療に対して、自由診療は患者さえ納得して支払うのであれば、価格決定権は医者にある。

 保険診療と自由診療を同時に受けることを「混合診療」というが、日本では原則として混合診療は禁止されている。正確に言うとできないわけではないが、自由診療を受けた場合は、保険診療分の医療費も、一部負担ではなく全額自己負担をしなければならなくなる。

 この混合診療の禁止がどのような問題を引き起こしているかというと、海外では広く使用されている抗がん剤などが、日本での厚生労働省による認可が遅れているため、保険診療で使用できなくなることだ。海外で効果が確認されている薬があっても、日本の患者は使えないか、あるいは使った場合、健康保険分も全額負担となり莫大な費用がかかることになる。同様のことは抗がん剤以外の未承認薬や先進医療でも起こっている。

 今般、規制改革会議が答申し、首相も次期通常国会へ改正案提出したいとしたのがこの混合診療に風穴を開ける「患者申出療養(仮称)」制度。臨床実績のある中核病院が間に入り、患者の申し出によって国内未承認薬や先進医療の利用を推し進める制度が検討されている。実際にどの程度の医療機関で実施できるかはまだまだ不透明だが、長年停滞してきた混合診療の拡大の第一歩となることは間違いないだろう。(編集担当:横井楓)