祇園祭の「後祭」が復活 伝統文化を伝える京の取組み

2014年06月29日 13:21

 毎年7月に京都で行われる祇園祭。日本中から観光客が訪れる日本有数の祭りの1つだ。1100年もの歴史を持つ祇園祭だが、今年から「後祭(あとまつり)」とよばれる行事が復活することをご存知だろうか。

 祇園祭は毎年7月の1ヶ月を丸々かけて行われる京都・八坂神社の神事だ。中でも14日からの宵々々山、15日宵々山、16日宵山、17日の巡行の間には、山鉾が建てられ、年間を通して京都に最も多く観光客が訪れる。この期間は祇園祭の「先祭(さきまつり)」に当たるのだが、こちらと対をなす「後祭」が今年、49年振りに復活する。

 元々祇園祭の山鉾巡行は、1965年までは先祭と後祭に分けて行われていた。しかし交通渋滞の問題や観光振興などの点から、その翌年から先祭のみに一本化。半世紀の間、前祭のみが行われてきた。京都市や祇園祭に関わる町内、また八坂神社は、ここ数年、祇園祭を古くから伝わる形に戻し、後世に正しく伝えるための試みを実施。毎年いくつかの山鉾を復活させるなど、取組みを続けてきた。その中でも最も大きな取組みが今年からの後祭復活だ。

 17日の「神幸祭(しんこうさい)」に合わせて行われる前祭に対し、後祭は24日の還幸祭(かんこうさい)に合わせて行われる。21~23日を宵山行事、24日を巡行とし10基の山鉾が建てられる予定だ。数は前祭に比べ少なく、宵山の露店営業なども行われないようだが、花傘巡行とも同時開催になるため伝統文化をじっくりと味わいたい人にはお勧めだ。また、日程的にも夏休みシーズンに入るため、前祭よりも旅行などと組み合わせやすく、そういった点での観光客増加も見込まれている。すでに後祭山鉾巡行の観覧チケットなども売り出されている。

 もちろん京都の観光振興や、それによる経済効果という意味合いも大きいが、それ以上に前述した「祇園祭を古くから伝わる形に戻し、後世に正しく伝える」という地元民の祇園祭への愛情が大きいと思われる。多くの業界が苦戦を強いられ、日本経済の強みが見えにくくなっている一方で、世界から日本への観光客数は2014年に入ってから大きく増加している。政府も観光客数の増加による経済効果に期待を寄せているが、そのためにはこのような地元文化への誇りと取組みが重要だろう。プライドが高いと言われる京都人だからこそ「うちの祭が日本一」という矜持もある。それを見習って、様々な地域が地元への愛情をもっと形にすることは必要だろう。ともあれ、日本が誇る無形文化遺産・祇園祭。後祭復活の機会に足を運んでみるのもいいだろう。(編集担当:久保田雄城)