安倍内閣「強い日本」の中身

2014年06月28日 18:13

EN-a_036

安倍総理の世界で最も企業が活動しやすい国づくりは文字通り、「安倍内閣の成長戦略にタブーも、聖域もない。あるのは、どこまでもやり抜く強い意志です」と自ら豪語する内容だ。

 こうした内容で閣議決定された政府の「骨太の方針」はまさに経済界が求めることをそのまま絵にかいた内容だった。

日本経済団体連合会の榊原定征会長は「経済界の考え方と軌を一にするもので、高く評価する」と発言したが、そもそも財界提言の言いなり。社会的弱者や中小零細企業に適当に予算を割り振り、大企業とともに世界で競争に打ち勝つための戦略ばかりに傾注する姿勢がみえる。骨太の方針に対し労働界は「企業や投資家の目線で経済界の要望を中心に取りまとめたもの」と冷ややかだ。「国民生活の底上げや将来不安の解消、雇用の安定や質の向上などはないがしろに」(神津里季生連合事務局長)と批判する。

 経済界提言といえば、原発再稼働への道筋をつける環境整備。先の国会での同意人事案件による原子力規制委員会委員の差し替えに象徴された。
 
 骨太の方針で示された原発への姿勢は「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ」と明記した。そのうえで「国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、その安全性については原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により、世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し、原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」ともっともらしい表現を明記した。

 それだけに「原子力規制委員会」が時の政府に影響されないことが担保され、かつ科学的根拠においてのみ安全性の判断を行う委員会として存在し、政治的中立性と電力業界はじめ経済界からも独立性が高くあってこそ、国民の信頼を得、規制委員会が規制委員会足り得る。ところが9月に任期切れになる委員。電力会社にとって厳しい判断姿勢で臨み続けてきた2人が再任されず、原発再稼働推進派として知られる人物を代わりに委員に取り上げ、国会に同意を求めた。

 野党がこぞって反対したが、衆参ともに多数議席を占める与党の思い通り、同意案件は通り、「再稼働推進派」の委員に挿げ替えられることになった。こうした状況で、原子力規制委員会が基準に照らして安全と判断しましたと言われて安心できるだろうか。

 集団的自衛権行使容認をめぐる環境づくりで、安倍総理による内閣法制局長官の首の挿げ替え時もそうであったが、今回の同意人事案件も野党の意見を無視したというより、国民の懸念を無視し、電力業界、経済界の利益至上主義を反映させた措置にみえる。6月26日、電力各社が株主総会を開いた。各社ともに原発の廃炉提案を否決。原発に依存せずに経営が成り立つ術をどこまで真剣に考えているのか、原発依存度低減か、電気料金引き上げか、二者択一の知恵しか持たないのか、不思議でならない。

 関西電力株主総会で橋下徹大阪市長が関電役員の経営者としての無能を指摘し、総退陣を求めたことが報道され、どれだけの国民が、それにうなずいたか。ところが、株主の多くは株主配当を優先したためか、廃炉は否決になった。

 東電福島第一原発事故の悲惨な状況は今も続いている。同じことがどこかの電力会社で起きた場合、廃炉に賛成しなかった株主のみなさんにも、出資分(株式投資分)にとどまらず、原発を存続させ、稼働へ道を開いた責任者のひとりとして、被災者に責任を負ってもらうくらいの法制が必要だ。あわせて、稼働原発から周囲30キロメートル圏内に電力会社役員ないし、その家族が居住する義務を負わせることを検討すべきだ。原発の安全性を高める努力を日常的に行わせる環境づくりになるからだ。

 電力各社の役員がその条件で再稼働を求めるのであれば、国民も多少安心するかもしれない。安倍総理も原発再稼働の許可条件にその程度の要請はすべきだろう。自民党の石破茂幹事長は「私どもは世界最高水準の安全が確認される、そして地域の方々のご納得、ご理解が得られなければ原発を再稼働しないという方針です」と明言した。

 そのことばを人柄同様、誠実に、自民党が与党である限り、自民党として変更しないで頂きたいと切に願う。(編集担当:森高龍二)