1次産業である農林水産業の活性化のために1次産業に2次産業や3次産業で行う加工、流通、販売を取り込む6次産業化が各地で推進されている。
その一環として、岡山県を営業基盤にもつ地方銀行であるトマト銀行<8542>が、みずほ銀行<8411>、農林漁業成長産業化支援機構らと共同して総額10億円の「トマト6次産業化応援投資事業有限責任組合」を設立し、1次産業の6次産業化を資金的に支援することを2014年1月17日に発表した。
トマト銀行の試みは、地域経済に豊富な情報を持つ地方銀行と日本全国や世界にかけての情報ネットワークを持つ都市銀行、そして6次産業化の支援ノウハウを持つ農林漁業成長産業化支援機構が互いの強みでタッグを組むので、従来の枠組みで行われる1次産業の6次産業化よりも効果的に推進できるものと期待される。
6次産業化とは、1次産業の生産物をブランド化し、消費者への直接販売やレストランを経営するなどの多角化経営を行うなどの事業形態である。6次産業化の著名な成功事例としては、タレントの田中義剛氏が経営する北海道の花畑牧場「生キャラメル」の例があげられる。
農林水産省が発表した「2010年世界農林業センサス結果の概要(暫定値)」によると、農業就業人口は5年前より、約22%にあたる75万人が減少し、260万人である。さらに、平均年齢は2.6歳上昇し、65.8歳となり高齢化している。跡を次ぐ者も少なく農業従事者の人口減は止まっていない。これは、林業、漁業も同じ構図である。
このような環境下にあるにも関わらず、日本政府は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加を表明していることから、1次産業は国外の安い農林水産物が輸入されてくるという脅威にさらされ、さらに衰退する危険性が増している。
1次産業の衰退は、食糧自給基盤の崩壊のみならず環境破壊も促進し、重大な影響を我々に与えるので、決して1次産業に従事する者だけの問題ではないことを認識しなければならない。今の食料自給率は、農林水産省によるとカロリーベースで39%、生産額ベースで68%となっている。この数字は、世界の食糧生産が異常気候などで落ち込み、食料輸出国が輸出を全面的にストップすると、3人に2人、あるいは良くても3人に1人は食べるものが無くなることを意味するのである。
TPP参加が決まる、決まらないに関わらず1次産業の活性化は地球人口の増大、異常気候の激化を考慮すると日本にとっては、緊急・重大な課題である。そして、1次産業の活性化は6次産業化の成功にかかっている。そのため、国、自治体は、6次産業化を積極的に推進しているが、今回のトマト銀行の基金設立発表は、地域活性化を超えた効果が期待できるといえる。(編集担当:阪木朱玲)