分配金に群がる日本の投資家 ガラパゴス化した日本の投信

2014年07月23日 12:28

 投資信託協会が発表した統計によると、公募投信が投資家に支払った分配金は2014年1~6月に2兆6016億円に上り、半期ベースで最高となった。主要国の株高や円安で投信の運用益が増加し、投資家への配分を増やしたためだ。

 日本の投信は、約7割が毎月分配型投信で、これほどシェアが高い状況は世界的に見ても特異だ。また、実現益だけでなく評価益についても分配をすることができる。それに対して、米国では、実現益からの分配は容認しているが、評価益からの分配することを禁じており、英国、仏国では、評価益だけではなく実現益も分配できない。つまり、キャピタルゲインから分配することに関して、各国の制度は異なるわけだが、そのなかでも、わが国では、実現益と評価益の両方から分配できる点が特徴的だ。

 日本の投信は、歴史的には預金に追従するために、預金に類似する市場性商品として発展することが宿命とされた。元本保証でない分、その分配額が預金金利を上回ることが不可欠であったが、インカムゲインからの分配だけでは、当時は高金利であった預金に対抗できなかったうえ、預金類似商品として分配金や元本の安定性が求められていた。株式等市場での運用を通じて預金金利より利回りを高く、しかも安定的な分配金という制約のなかで、インカムゲインだけではなく、キャピタルゲインからも分配できるように対象を拡大した。

 しかし、キャピタルゲインは不安定である。そこで、キャピタルゲインとインカムゲインを独立させ、互いに影響を与えないようにするために、両者の勘定を別建てにした。キャピタルロスが生じた場合でも、経費控除後のインカムゲインがあれば分配ができ、さらに分配原資は過去に分配せずに留保した利益からの分配もできるようになっている。

 元本が減少しても分配金を出し続ける投信に「タコ足分配」と批判する声もある。しかし、現在の分配金の仕組みは1950年代に確立されたものを踏襲しており、預金との類似性を確保することが目的だったのだ。今や投信の販売においては預金と誤認させる行為を厳に戒めている。にもかかわらず、その制度の根幹は変わっていないのだから綻びも出てくるだろう。(編集担当:久保田雄城)