個人マネー投信に流入 変化する投資家のニーズ

2014年07月21日 13:29

画像・個人マネー投信に流入 変化する投資家のニーズ

個人向け金融商品の代表である投資信託への資金流入が続き、資産残高が7年ぶりに最高となった。証券会社や銀行などで買える公募投信は、6月末の資産残高が約83兆5000億円と、これまでで最高だったリーマン・ショック前の2007年10月の82兆1518億円を更新した。

 日本株の値動きがさえないにもかかわらず、新たな個人マネーが安定的に投資に向かう流れが定着。個人向け金融商品の代表である投資信託への資金流入が続き、資産残高が7年ぶりに最高となった。証券会社や銀行などで買える公募投信は、6月末の資産残高が約83兆5000億円と、これまでで最高だったリーマン・ショック前の2007年10月の82兆1518億円を上回った。

 前のピークである07年に残高が最大だったのは、リスクが低い主要国の国債で運用する「グローバル・ソブリン・オープン」(グロソブ)。最盛期の資産残高は5兆6000億円。それに対し6月末で最大の残高を持つのは、信用力が低く金利が高い米国企業の社債などに投資する「フィデリティ・USハイ・イールド」で、残高は1兆3000億円だ。両者の盛衰を比較すると、投資家のニーズの変化が見えてくる。

 キーワードは分配金だ。グロソブは08年以降、資金の流出が続いている。07年、最盛期のグロソブは40円の分配金を出していた。しかし、リーマン・ショック以降主要国が金融緩和政策を取ったために債権の利回りは低下。09年には分配金は30円へ引き下げられ、一時35円へ引き上げられたものの、現在は20円だ。一方の「フィデリティ・USハイ・イールド」は現在70円の分配を行っている。分配金の多寡が投資信託の純資産残高ランキングで長らく首位に君臨してきた王者グロソブをその座から引きずり下ろすこととなった。

 グロソブを運用する国際投信投資顧問は、続く資金流出の要因を「足元の運用成績はよいのだが、高い分配金を出す他のファンドに投資家が流れた」としている。対して、「USハイイールド・ファンド」のフィデリティ投信は、「人気の要因は利回りが高いことに尽きる」と意気軒高だ。

 リスクの少ない債券から、よりハイリスク・ハイリターンのものに資金が移るという、世界的なリスクオンの流れがあるという分析もある。しかし、高齢の投資家が年金を補うためにリスク度外視で分配金の多いファンドを渡り歩いているという販売現場の声も聞こえてくる。自分がどんな資産に投資しているのかも分からず、にとにかく分配金の高いファンドを選ぶ高齢者が多いという。分配金重視のファンドのあり方を疑問視する声も上がったが、それでも投資家は高い分配金を選んだ。年金に対する不安が日本の投資信託をガラバゴス化させているのではないかと筆者は思う。(編集担当:久保田雄城)