5月26日に行われた電力需給に関する検討会合において取りまとめられた「2014年度夏季の電力需給対策について」によると、8月の電力需給見通しでは、周波数変換装置(FC)を通じた電力融通を行わなければ、中部及び西日本では、電力の安定供給に最低限必要な予備率3%を下回る厳しい需給状況が予測されている。とくに、関西電力管内は1.8%、九州電力管内は1.3%とさらに厳しい見通しとなっている。しかも、恐ろしいことに、これが発表された5月に時点ではまだ、気象庁の気候予測では、エルニーニョ現象の影響によって、今年は冷夏、もしくは平年よりも涼しくなると予想されていたのだ。しかし、肝心のエルニーニョの発生は秋にずれ込み、今年は7月から例年を上回る暑い日が続いている。5月の予測以上に、電力供給は厳しくなってしまうだろう。
家庭での節電には大きく2つの道がある。一つは創電だ。太陽光発電を導入して消費電力をまかなう方法だ。政府はもとより、住宅メーカーなどもこぞって太陽光発電の設置をすすめている甲斐もあり、一般住宅への太陽光発電設備の設置件数は2012年の時点で100万件を超え、2025年までには普及率が20%にまで達するとみられている。しかし、普及は加速しているとはいうものの、さすがに今年の夏に間に合うようなものではない。今年の夏、日本の電力がパンクしないためにはやはり、もう一つの道、各家庭単位での細かな節電の積み重ねしかないだろう。とはいっても、節電は大切な一方、猛暑日に無理をすると熱中症になる危険性も高まる。賢く節電しながら、この厳しい夏を快適に乗り切る方法はないものだろうか。
これについて、ホームビルダーの中でもとくに「エアコンを使わない快適な暮らしの実現」に向けた取組みに力を入れているアキュラホームに話を聞いてみた。同社によると、涼しく過ごすためには、熱に対して4つのポイントを抑えるようにすれば良いという。すなわち、熱を「入れない」「出さない」「排出する」「冷ます」の4つだ。
まず、熱を「入れない」方法は、家屋自体の断熱性能を高めること。とはいえ、大掛かりなリフォームの推奨ではなく、窓に遮熱シートを貼ったり、ブラインドやすだれ、ゴーヤなどで緑のカーテンを作って、日射遮蔽をするだけでずいぶん違う。同社の計測では、直射日光が当たる室内に比べ、窓を開けてすだれで日射遮蔽した室内では、フローリング床面の温度がなんと12.6度も下がったという。また、熱を「出さない」ための具体的な方法の一つとしては、部屋の照明を白熱灯からLEDに交換することを勧めている。同社の比較実験では、白熱灯とLED照明では53.6度もの差があったという。たかが電球一つでも、これだけ温度が違うと、室温にも大きく影響するだろう。
熱を「排出する」方法については、同社では天窓や高窓の設置を推奨しているほか、各部屋2方向、窓や扉を開けることを勧めている。通風が確保できれば、換気、対流が起こって部屋の温度を下げる効果があるのだ。そして最後の熱を「冷ます」方法については、同社ではベランダや庭への打ち水を勧めている。
面白いのは、ホームビルダーであるにもかかわらず、リフォームなどを提案するのではなく、どんな家庭でも今すぐに実践できそうなものばかりを勧めているということだ。同社曰く、日射遮蔽をしたり、風の通り道を確保したりすることで、家屋の保全にもつながり、同社が力を入れている「家守り活動」の一環になっているという。
よくよく考えると、一昔前までは、どこの家庭でも当たり前のようにやっていたことばかり。エアコンの性能に頼るあまり、知恵を絞った日本伝統の暑さ対策を忘れてしまっているのではないだろうか。いくら暑くても、軒先に風鈴を下げて、涼しげな音色を楽しむくらいの余裕は持っていたいものだ。(編集担当:石井絢子)