7日はまだ7月の「まぼろしのSQ値」15084円が下値の防衛線の役割を果たしてくれていたが、8日はそれも、8月のSQ値15036円も、200日移動平均線も75日移動平均線も、さらに「夏のマジノ線(最終防衛線)」になると思われた6月の「まぼろしのSQ値」14807円もことごとく突破され、テクニカル的には戦力を全く無力化された「降参」の状態になった。7月には、一目均衡表の「雲」も、200日線も75日線もはるかに下にあったのだが、今は移動平均線は全て上に見上げる位置にあり、日経平均は日足でも週足でも「雲」の中でもがいている。
もともと、8月の東京市場はぜい弱。1999~2013年の過去15年間の8月の月間騰落は、NYダウが9勝6敗だったのに対し日経平均は5勝10敗。リーマンショック前の2004~2008年はNYダウ4勝1敗に対し日経平均は1勝4敗だった。「8月は為替が円高傾向になるから」とよく言われるが、夏休みモードで国内の投資家の参加が減ってその分、今回のような海外発のショックに対して弱くなることもその原因なのかもしれない。
そうは言っても、8日に限って言えばいくら何でも売られすぎだった。オシレーター系のテクニカル指標をチェックすると、25日移動平均線乖離率は-3.73%、ストキャスティクスの9日Fastは9.96で1ケタになり、4日は100.58だった騰落レシオは8日には78.03まで下がっている。極めつきはボリンジャーバンドで、終値14778円は25日移動平均線-3σ(第3標準偏差)の14817円よりも下だった。統計学の理論では、第1標準偏差(1σ)の外に出る確率は31%、第2標準偏差(2σ)の外に出る確率は5%、第3標準偏差(3σ)の外に出る確率は0.3%となっている。確率が0.3%とは、300円のサマージャンボ宝くじを1枚買って、当たりくじが1000枚中3枚ある5等賞金3000円が当たってリターンが10倍になる確率と同じである。日経平均はいま、そんなめったに見られないポジションに位置している。
物は考えよう。めったにないポジションまで突き落とされたということは、めったにない大チャンスということ。下げ方があまりにも激しかったから、リカバリーも激しいはずだと考えたい。
8日の454円安の「半値戻し」は227円高の15005円。言い換えれば15000円の大台を回復するには、半値戻しでいい。8日のNYダウは185ドルの大幅高で8月の下落分を10ドル残してほぼ取り返し、為替のドル円は102円台に戻ってCME先物清算値は15010円だったから、11日前場中の半値戻し達成、15000円台回復は有望とみる。もしそうなれば、8日の14700円台はマイナーSQの日の白昼の悪夢、過剰反応による「真夏の蜃気楼」を見たということで済ませ、気持ちを切り替えて相場に臨むことができる。
だが、今週は地政学的リスクは別物としても、国内に非常に厄介な経済指標の発表がある。それは13日に発表される4~6月期GDPで、消費増税による反動減で悪化するのは確実。問題はその程度で、市場予測は7.2%減(中央値)である。7.2~8.0%減程度だと為替が円高になり輸出関連業種の株価が下落する程度で済むかもしれないが、8%台後半や9%台の減少だとディフェンシブ系も含めて大部分の業種の株価を直接、押し下げるだろう。だから今週、最も警戒を要する経済指標である。ただし、発表が週初ではなく13日の水曜日なので、あらかじめ15000円の大台を回復しておけば、GDPが1ケタ台の減少にとどまる限り、日経平均の下落は14800円台まででおさまるとみる。その時もまた、押し目買いのチャンスになる。
一方、上値のほうは、8日の下落分の全値戻しは7日終値の15232円だが、15000円との間に日足一目均衡表の「雲」の上限(15122円)や5日移動平均線(15193円)があること、13日にGDPの発表があること、地政学的リスクが残って再燃もありうること、主力銘柄の決算発表が峠を越えたこと、市場参加者が少なくなることを考え合わせると、全値戻しまでで精いっぱいではないかとみる。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは14800~15230円とみる。8日の地すべり的大幅安で気分が凹んでいる投資家がいるかもしれないが、この日は決算が非常に好調だった銘柄、投資判断が引き上げられた銘柄、かなりの好材料が出ていた銘柄でも、地合いの悪さのせいで無残に売り込まれて株価が不当に安くなるケースが散見された。今週はhappy-go-lucky(成り行きまかせ)では困るが、銘柄を選んで収益目標を設定して戦略的に臨めばハッピーもラッキーもきっとあるはずだ。(編集担当:寺尾淳)