7日のNYダウは75ドル安で3ヵ月ぶりの安値。NASDAQ総合指数は20ポイント下落。オバマ大統領は過激派が実効支配するイラク北部への空爆を検討と報じられ、ガザの戦闘も出口が見えず地政学的リスクによる売りが止まらない。経済制裁への報復としてロシアがフルーツなどの輸入禁止措置を講じアメリカ経済への打撃が意識される。ECBは政策金利を据え置き、新規失業保険申請件数は改善したが、指標が良いと「利上げが早まる」懸念が台頭。「成績が良いと親が怒る」ような倒錯状況がまた現れた。8日朝方の為替レートはドル円が102円台前半、ユーロ円が136円台前半で、円高がさらに進行した。
CME先物清算値は15010円。取引時間前に1~6月の国際収支が発表され上半期初の5075億円の経常赤字。マイナーSQで、日銀の金融政策決定会合の結果が発表され、決算発表が第2のピークを迎える日の日経平均は168.64円安の15063.73円で始まる。TOPIXも10ポイントを超える下落。序盤は15050円近辺で踏ん張り、7月の「まぼろしのSQ値」の効果が持続するかと思われたが、SQ推計値15036.83円が出たら午前9時17分に15020円まで下落し3ヵ月連続の「まぼろしのSQ」ならず。10時を回ると6月18日以来の15000円の大台割れを喫するが、10時30分まで15000円近辺の水準は維持していた。
全てを真っ黒に塗りつぶしたのがオバマ大統領の「イラク北部の限定空爆を承認した」という緊急声明。これで地政学的リスクのメーターはレッドゾーンに振り切れた。東京市場はリスク回避の円買い、リスクオフの株安・債券高のフルセット。11時台にかけてドル円は101円台、ユーロ円は135円台へ円高が急進し、アジア市場も上海を除き全面安。日経平均は先物主導で11時台に14900円、さらに6月の「まぼろしのSQ値」14807円も14800円もあっさり割り込み11時20分に14753円まで下げ、前引けは14776円だった。
影が薄くなったが昼休みに日銀の金融政策決定会合の結果が出て、金融政策の現状維持を全員一致で決めて足元の輸出や生産への判断を下方修正した。後場は前引けとほぼ同じ水準で始まり、前場のパニックが少しは落ち着いたか日経平均は14800円台を回復する。イラク北部より先に「焼け野原」になった東京市場は14800円プラスマイナス20円の値幅で動かなくなる。午後2時に内閣府から7月の景気ウォッチャー調査の結果が発表され、現状判断指数は3.6ポイント上昇、先行判断指数は1.8ポイント下落。それでも3ヵ月連続改善の現状判断を好感して日経平均は少し上昇して14850円を超えた。
しかし終盤は押し下げられて14800円を割り込み、そのまま大引けとなり454.00円安の14778.37円と大幅反落して1勝4敗、前週末1日終値から744.74円下落して今週の取引を終えた。アメリカの株安、円高、地政学的リスクに今週は勢いを増した海外の先物売り勢力、利益確定売りの金曜日、お盆休み前のポジションの手じまいなどが重なりあい、もう笑うしかないような-2.98%、454円の底抜け暴落劇を演じてしまった。日中値幅は321円。TOPIXは-29.86の1228.26で2.37%下落。売買高は27億株、売買代金は2兆5678億円で、マイナーながらもメジャーSQ並みの商いだった。
東証1部の値上がり銘柄数は131で全体の7%しかなく、値下がり銘柄数は1656で91%を占めた。これだけ下げては33業種別騰落率は全セクターがマイナス。下落幅が小さい業種は鉱業、空運、その他製品、繊維、サービス、電気・ガスなど。大きい業種は非鉄金属、精密機器、その他金融、不動産、保険、情報・通信などだった。
日経平均採用225種は値上がりがたった3銘柄で、値下がりが222銘柄。プラス寄与度1位は横浜ゴム<5101>、2位は電気化学工業<4061>、3位は帝人<3401>で、いずれも+0.5円以下。マイナス寄与度1~4位は「日経平均寄与度四天王」が揃い踏みし、合わせて日経平均を114円も押し下げた。
3羽の「廃墟のハト」は、横浜ゴムは後場に12月通期の純利益を420億円上方修正して11円高、電気化学工業は4~6月期は減収減益だったが期末の創立100周年記念配当2円を好感され9円高、帝人は2円高だった。
メガバンクも証券大手も大きく下落。円高進行でトヨタ<7203>は123円安、ホンダ<7267>94.5円安、マツダ<7261>71円安と自動車大手は大幅安。電機大手もソニー<6758>41円安、日立<6501>19.3円安、NEC<6701>12円安、シャープ<6753>4円安と全面安だった。太陽誘電<6976>は4~6月期決算の営業損益が6.5億円の赤字で前年同期から39.3億円も悪化。野村證券が目標株価、UBSがレーティングを引き下げ96円安で年初来安値を更新し値下がり率8位。
ニコン<7731>が前日発表した4~6月期決算は売上高26%減、営業利益42%減、純利益17%減の2ケタ減収減益。通期見通しを売上高は400億円、営業利益は100億円、純利益は70億円下方修正し148.5円安で年初来安値を更新し値下がり率7位だった。ヨーロッパでデジカメが売れず業績が冷え込んでいる。オリンパス<7733>は4~6月期の最終利益が81億円の黒字で過去最高を更新し、ドイツ証券とゴールドマンサックスが目標株価を引き上げたが255円安だった。
エアバッグやチャイルドシートのタカタ<7312>は、エアバッグの不具合による世界約800万台分のリコール費用約447億円を4~6月期で特別損失に計上するため、通期の最終損益が240億円の赤字に転落する見通しを発表。売上高は150億円、営業利益は20億円上方修正したが、1年で稼ぐ分が全てリコール費用に消え、なおかつ赤字。それでもなぜか75円高。ベネッセHD<9783>の110円高ともども焼け跡の狂い咲き?