8月12日、政府が新たな政府専用機として、ボーイング社のB777-300ER型機を採用すると正式発表した。ANAホールディングスの提案を受け入れ、整備などの後方支援業務を同社に委託する。現用のB747-400型機2機は、導入からすでに20年以上経過し、これまでJALが整備運航などの支援体制を担当していた。が、今回の決定でライバルのANAに明け渡す事になった。政府専用機の支援業務は、日本を代表するナショナルフラッグとしてANAが、その地位を獲得することとなった。
次期政府専用機の後継機種選定は防衛省内に「政府専用機検討委員会」を設置して内閣と一体で作業を進めてきた。選定は政府が提示した政府専用機に必要な性能を満たす機体、乗組員の教育、機体の整備などをパッケージとして募集していた。この候補機の整備作業の委託先を含めて、ANA、JAL両社から提案書を受理していた。
提案書を検討した委員会では、機体の性能、機内使用、後方支援、教育訓練、納期、経費等選定項目すべてで、ANAの提案がJALを凌駕したという。JALも同型機を提案したが、国内で同型機をもっとも多く所有し、経費なども安く抑えたANAに決定した。
新た専用機であるB777-300ER型機は全長×全幅×全高73.9m×64.8m×18.5m、胴体部の横幅は6.2mと世界最大級のジェット旅客機。エンジンは米GEのGE90-115BLを採用する。航続距離は約1万4000km。現行機に比べて燃費が3割ほど向上するという。
政府専用機は専用機に必要な貴賓室のほか会議室、記者会見場などのスペースを設置し、2019年から運行を開始する。専用機はトラブルなどに備えて2機同時に飛ばすのが常套。後継のB777-300ER型機2機導入が決まっており、購入費は約850億円だ。
今回、ANAが政府専用機運航支援業務獲得した背景には、JALが経営破綻後、いまだに再建途上にあるということだろう。過去最大の債務切り捨て、法人税減免などへの批判が影響しているようだ。
ANAは、ボーイング製旅客機の運行・整備技術面での能力でライバル各社をリードしているとされ、今回政府専用機の運行支援業務の座を獲得した。国内航空界の主導権をANAが握ったか?(編集担当:吉田恒)