クラウドソーシングサービス市場の調査結果に見る新規事業の可能性

2014年08月16日 21:08

画像・クラウドソーシングサービス市場の調査結果に見る新規事業の可能性★

東日本大震災以降、在宅ワークやテレワークへの需要が高まり、企業や団体等がインターネットを利用して、不特定多数の登録ワーカーに業務委託を行う、クラウドソーシングサービスが注目を浴びてきている。

 東日本大震災以降、在宅ワークやテレワークへの需要が高まり、企業や団体等がインターネットを利用して、不特定多数の登録ワーカーに業務委託を行う、クラウドソーシングサービスが注目を浴びてきている。

 7月30日、矢野経済研究所は、クラウドソーシングサービスの市場に関わる調査結果を発表した。この調査の中で、同社は、「クラウドソーシング事業者間の競争は激化するが、市場自体の成長は継続する」と結論づけている。本調査では、クラウドソーシングサービス事業を企業・団体から依頼された仕事の金額総額(流通金額)をベースにし、市場規模として算出、2013年度は、101.7%増(前年比)の215億円と試算した。増加した理由として、在宅ワークやテレワークへの需要の高まりに加えて、クラウドソーシングサービスを試験的に利用する企業が増加したためと同社では分析している。また、今後の市場規模として、流通金額ベースで、18年までに、1,820億円規模になると推計している。市場が成長する主な理由としては、14年にクラウドソーシング協会が設立され、業界全体で認知度向上や利用促進への取り組みが加速する可能性が高く、クラウドソーシング事業の基盤が整備されることをあげている。

 一方、参入企業数の増加により、価格競争が厳しくなり、また、顧客や登録ワーカーを増やすことのできないクラウドソーシング事業者が出てくる可能性があり、クラウドソーシングサービス事業においても、成長阻害要因もあるものの、全体的には拡大基調にあると結論付けている。クラウドソーシングサービスの利点は、正社員という雇用契約に依存せずに、ワーカーと企業間の業務委託契約により、仕事が成り立つという点で、ワーカーにとっては、自分の生活環境や時間など拘束を受けずに、収入を得ることが可能となる。また企業側にとってみれば、正社員としての雇用を行わず比較的安い賃金で、業務を発注することが可能となり、企業の収益構造にメリットをもたらすことができる。ただ、本調査でも指摘されているように他の産業と同様に価格競争にはいるとすれば、企業にとって、質の高いワーカーをいかに囲い込むかが課題となり、有能なワーカーを奪い合うこととなる。その一方で質の悪いワーカーに業務を発注することにより、業務内容が低下し、結果としてクラウドソーシングサービス事業者自身に悪影響を及ぼす危険性もはらんでいる。

 新規事業では、初期投資を極力抑えたいのが企業の本音であるといえる。業務委託を行う企業側も、本質を見極め、自社では対応のできないサービスや特殊な技能を必要とする業務内容にしぼり、効果的に利用する必要があるのではないだろうか。クラウドソーシングサービスを利用した新規事業創出が新たな経済成長を促す起爆剤になることを期待している。(編集担当:久保田雄城)