経済財政諮問会議 望まれる労働界の代表起用

2014年08月30日 20:26

画像・日本は世界最高の長寿企業社会 次世代は自動車業がカギとなる?

財界優先、大企業優遇政策最優先との批判が出始めた安倍政権が、さらに、財界密着になりそうだ。安倍政権誕生から1年も経ないうちに、日本経団連などからの提言や要望を反映させた経済政策が次々打ち出されてきた。

 財界優先、大企業優遇政策最優先との批判が出始めた安倍政権が、さらに、財界密着になりそうだ。安倍政権誕生から1年も経ないうちに、日本経団連などからの提言や要望を反映させた経済政策が次々打ち出されてきた。そして9月には内閣府設置法に基づく重要政策会議で政府の経済財政運営の司令塔の役割を担っている「経済財政諮問会議」の一員に経団連の榊原定征会長を民間議員として起用するという。

 榊原会長は経団連会長に就任間なしに、自民党への政治献金再会を打ち出した人物。企業献金や団体献金が政治との癒着の温床になるため、これをなくしていこうと代替策として政党助成金制度が創設され、その実効をあげることが求められている中で、これに逆行する考えをお持ちの方のようだ。

 財界の意向を政府の政策に反映させる狙いがあると勘ぐられても仕方ない。経団連と安倍政権。言うまでもなく法人実効税率(全国平均34.62%)の20%台までの早期引き下げ実現をはじめ、TPP交渉妥結の早期実現、原発輸出を後押しする国内での原発再稼働の早期実現、さらに消費税10%への引き上げを予定通り実現させる環境づくり。経団連のこれまでの政府・与党への提言などはほぼ、安倍政権の政策や方向性と同じくしている。

 今度は経済財政運営の司令塔となる会議のメンバーに民間議員として招き入れ、二人三脚で、安倍総理が目指す「強い日本」を形成しようということらしい。二人三脚が、政権と財界癒着の政策にならないよう監視する必要がある。

 経済財政諮問会議は9月に4人の民間議員のうち、伊藤元重東大大学院教授と高橋進日本総合研究所理事長の2人は続投。東芝の佐々木則夫副会長と三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長の2人が勇退する。

 この入れ替えとなるのだが、残り一人の民間議員についても企業経営者を起用するといわれる。しかし、総理と関係閣僚(副総理兼財務大臣、内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、総務大臣、経済産業大臣)と日銀総裁、民間議員が経済財政運営の重要事項を議論する重要会議だけに、財界・政府癒着政策の場と揶揄されないためにも、残る民間議員席には労働界の代表を起用する勇気を期待したい。

 総理のリーダーシップを十全に発揮する、あるいは発揮させるための会議なので、総理にとって民間議員は最も信頼できる、かつ、自らの考えに一致する人物を席に座らせたいだろうが、労働界の視点を会議に入れることで、より広がりのある議論と政策の視点を持たせることが可能になるだろう。

 来春の統一地方選挙やその先の総選挙を見据えるのは、総理ポスト保持と自民党総裁ポスト保持、そして実際にそのポストにある立場として理解できなくもない。そのため財界や企業経営者からの起用も理解できなくもないが、それ以前に、安倍総理が政権復帰直後に誇示した「これまでの自民党とは違う」と言ったカラーを、こうした重要会議の議員起用にこそ反映させるべきだ。9月上旬の経済財政諮問会議の民間議員起用を注目したい。(編集担当:森高龍二)