隠された数字が示している所得格差拡大の現実

2014年07月27日 18:31

画像・隠された数字が示している所得格差拡大の現実

経済協力開発機構(OECD)は所得格差の拡大に警鐘を鳴らしている。当初所得のジニ係数で見ると、日本の格差は過去30年間で確実に拡大し続けている。最大の要因は社会構造にあり、少子高齢化による生産性の低下だと言われている。

 経済協力開発機構(OECD)は所得格差の拡大に警鐘を鳴らしている。OECDの調べによると、2000年以降、カナダ、ドイツ、ノルウェー、アメリカ、イタリア、フィンランドなどの国々で所得格差が拡大しており、日本もそのうちのひとつに該当している。OECDはリーマン・ショックを発端とする世界的な経済打撃の後、さらに高所得者層と低所得者層の差が広がっていると分析している。格差拡大の要因は中間所得者層や低所得者層と比較して、高所得者層が好調にあることと、若者や夫婦と子どもの核家族世帯の貧困率の上昇が挙げられている。しかしこうした要因は世界共通というわけではなく、国それぞれに格差拡大の理由は異なるようだ。

 日本の格差拡大の最大の要因は社会構造にあり、少子高齢化による生産性の低下だと言われている。国際競争力を上げることができずにグローバル化する市場に遅れをとり、またIT技術の発展で高度なコンピュータ技能を持つ人と持たない人の差が所得格差に繋がっているという点も指摘されている。

 格差を測る基準として用いられているのがジニ係数だ。ジニ係数とは所得分配の不平等を測定するもので、数値が0であれば完全な平等ということになり、1に近づくほど格差が大きいということになる。社会への不満から反乱が起こる可能性を測る尺度としても扱われ、0.4で警戒ライン、0.6で危険ラインとされている。厚生労働省の調査によると近年の日本のジニ係数は所得の再分配によって0.38前後まで抑えられている。11年の当初所得のジニ係数は0.5536だが、税金や社会保障である年金や医療費、介護費等の再分配によって差し引かれ、0.3791にまで抑えられている。

 再分配によってジニ係数が抑えられているというのが日本の現状だ。しかし当初所得のジニ係数は過去30年間増加し続けており、1999年は0.4720、2005年には0.5263、08年で0.5318となっている。再分配後のジニ係数は1999年で0.3814、2008年では0.3758と抑えられているものの、実際の格差は確実に拡大し続けているという状況にある。

 OECDの玉木林太郎事務次長兼チーフエコノミストは、安倍政権が推し進める経済政策は日本の格差を拡大させており、格差解消への取り組みが後回しになっていることに懸念を示している。医療費削減や年金の支給減額が検討されるなど、所得の再分配の枠も不安定に揺れている今、格差拡大は多くの人にとって身に迫った問題だろう。(編集担当:久保田雄城)